「ラスト・ブラッド」 公式サイト  動画コンテンツてんこもり!


主演のサヤを演じたチョン・ジヒョンも小雪さんも、それからサヤと魂の交流をする美少女アリス役のアリソン・ミラーも、女性陣は皆可愛く美しく、しかも強くて健気で、そして必死で、傷だらけになりながらも常に生きようと前に進み続ける、女性である私の目から見ても好感度抜群の映画でした。若くていい男が出てなくても、男以上に男っぷりのいい男前なおねえさん達が活躍してれば気にならないのね、と思ったりして。


ストーリーが荒唐無稽で特殊効果満載でお姉ちゃん達が可愛い映画といえば、すぐに実写「ドラゴンボール」が思い出されるのですが、こちらで描かれていたブルマ・チチ・マイ達が単に監督の好みで揃えられたサービス用かわい子ちゃんにすぎない薄っぺらのキャラになってしまっていたのに比べ、「ラスト・ブラッド」の女性達はその荒唐無稽な設定の中で定められた運命や宿命に或いは従い、或いは抗って、生き抜くという気概を与えられていました。それがすなわちキャラクターの命となり、観客達に迫る力を得ていたのです。


身も心もハードな役に挑み、演じきった「ラスト・ブラッド」の三人の女優さん達には惜しみない拍手をおくります。CGIの特殊効果にリアリティーを与えるのは、役者の演技力ですからね。


もっとも「ラスト・ブラッド」では特殊効果はそれと分かるように見せていましたが。

サヤの斬る相手との「オニ」いうのはそもそも人間ではないので、傷口からこぼれる血がまず人間の血とは異なる形状で飛び散るんですね。

皆さん、かなり残虐な斬られ方をされるので、「血」が飛び散った瞬間に「人間じゃない」と分かるのはかなり重要な事だと思います。



「ウォーロード」などでは本当にリアルに血飛沫があがり、手や足といった人体のパーツも体を離れて転がるシーンが多々あって、目を背けたくなりますから。これはCGIだ、と思っているからある程度は平気ですが、CGIと思っているのは言ってみればこちらの思い込みに過ぎないわけですから、ひょっとしたら実際にスパスパ手足を切り落としているシーンを撮影したのを見せられているのかもしれないんです。もしそうだとしても、まずCGIとの区別はつかないだろうなと思いながら見るのはかなりスリルがあります。


一応、それでもそれが「映画」であることが見分けられるのは、「カメラワークが見事だから」という理由に尽きたりするんですよ。それを逆手にとって「カメラワークが下手だから」本当のことと観客が受け取るように仕向けたのが「クローバーフィールド HAKAISHA」とか、さらにその元となった「ブレアウィッチプロジェクト」ですね。ハイ、余談でした。



「ラスト・ブラッド」でもクライマックス近くには人間が突かれて、刺されて、斬られるシーンが出てきます。その時あふれ出るのは当然人間の血潮なんですが、この時はちょっとその量が尋常じゃないくらい多くて「あれ?」って感じでつい失笑気味になってしまったので(おっさん、一体、何リットル血があるんじゃ?)、残酷極まりないそのシーンを真剣に真っ正面から受けとめなくてすむという効果を生んでいました。もしかすると人間の血糊に飢えていたスタッフの誰かさんがここぞとばかりにどばどば流血させただけかもしれないんですけどね。


逆にオニ同士の最終対決になると血はほとんど流れず、幻想的な美しい戦闘場面になります。

女優さんがメインなのに戦闘シーンは男っぽくて、でも男だけの映画のように殺伐としただけでは終わらず女性ならではの透き通るように美しいシーンがきちんと用意されている映画としては、ヴィッキー・チャオとカレン・モクの「クローサー」、ミラ・ジョヴォヴィッチの「ウルトラ・バイオレット」に並ぶでしょうか。



若くて美しい女優さん達のイキのよさをひきたてるためか、メインキャストに若くていい男はいないんですが、しかし彼女達を守る立場の男性陣は皆渋さが魅力の年配系でした。どっちかというとお父さんというよりはおじいさんに近い年代ばかり。お父さんに近い年代の男は何故かイヤミで感じの悪いヤツが多いという……まあ、いわゆる「女性の敵」みたいな感じなんでしょうね。



好演が印象に残ったアリス役のアリソンちゃん、どこかで見た顔だわ~と思っていたら「コールド・ケース」や「CSI ニューヨーク」に出ていたらしいけど、それよりもつい最近見たばかりの「セブンティーン・アゲイン」に出ていたと知ってびっくり。


え~、だれだ~? いたっけか~?!


と泡食って調べたら、ザック・エフロン演じる主人公17才と恋仲の若き日のスカーレットでした。

――あれは出番が少なかったしアップはさらに少なかったから覚えてなくても無理ないや……。

でも若き日のスカーレット、華奢で可愛く痛々しく、でも健気で芯の一本通った強い子で、確かに「ラスト・ブラッド」のアリスに通じるところありますよ。アリソンってそういう役が似合うんだな。


ちなみに役名の「アリス」は、ちゃんとそれなりの意味があって名付けられたものでした。

理由が知りたい方は映画館へGO!