シネマトゥデイ より(以下抜粋)
米国西海岸時間6月25日の午後に急逝してしまったマイケル・ジャクソンさんの7月13日よりロンドンで予定されていた延べ50公演に渡る、「ディス・イズ・イット(This is it.)」と銘打たれた世紀のカムバック・ツアーの中止にともないロンドンでは多額の経済損失を計上しそうだ。
ツアー開始日を目前にして、当然の事ながらコンサートのチケットはすでに完全なるソールドアウト。ロンドンのファンのみならずオンラインを通じて世界中のマイケル・ファンがチケットを買い求めた。
マイケルさんのカムバック・ツアーを楽しみにしてたファンのガッカリもさることながらマイケルさんのツアー企画・プロモーション会社にあたるAEGライブのショックと落胆度は別の意味で計り知れないものがある。なぜなら彼らは、チケットを買ったファンに対して、コンサート・チケットの払い戻しを考えなければならないからである。
ウォールストリート・ジャーナルによれば現時点で、AEGライブはすでにマイケルさん側に推定2,000万ドル(約20億円)の前ギャラを払い終えており、それにプラスしてもう1,000万ドル(約10億円)ほどをツアーの準備にと注ぎ込んでいるらしい。
またAEGライブは当初マイケルさんのイギリスツアー後にワールドツアーを予定しており、その後はラスベガスに拠点をおいて、エルビス・プレスリーや、最近ではエルトン・ジョンやセリーヌ・ディオンのように有名ホテルお抱えのナイトライブ・ショーを始める……という企画まで立てていたのだ。
製作には、映画にしろコンサートにしろ、こういった不慮のアクシデントに備えて保険が掛けられている。一説には、アーティストが薬物依存で死亡した場合にその保険金は下りないとも言われており、AEGライブにとってもマイケルさんの死因は気になるところだろう。また、チケット代以外のツアーの準備用の1,000万ドルに対しての保険金の支払いも難しいのではないかともみられている。
いずれにせよ、チケットの払い戻しだけを考えても、約75万枚のコンサート・チケットをさまざまな国に住むファンに払い戻すのは頭痛のタネだろう。しかし、AEGライブにとって都合がよかったのはチケットはまだ未発送だったということだ。このまま払い戻しをせずに、メモリアルとしてチケットを希望者に発行するのではないかとの見方もある。
マイケルさんのツアー中止により打撃を受けるのは、プロモーターや保険会社だけではない。ツアーが予定されていたロンドンの02アリーナの周辺にあるホテル、パブ、土産物店、レストランなどマイケルさんの公演中に訪れるファンたちをあてにしていたビジネスは推定10億ドル前後(約1,000億円)の商業収入を失うことになるとイギリスの経済紙が伝えている。ただでさえ不況の真っただ中にいるロンドン経済にとってかなりの打撃である。ポップ界キングの突然の死は、ファンのみならず経済界にも影響を及ぼしているのである。