「ワイルド・MAX」公式サイト

ワタクシ、このシリーズの発端となった「ワイルド・スピード」がWOWOWで放映された時、一応ちゃんと見ようと思って腰を据えたんですよね。でも何故か映画の途中でどうでもよくなって、腰は据えても目は画面の方を見ていなかったらいつの間にか終わっていて、字幕だったんで見ない限りは話の細かい内容なんか全然理解できていないままでした。

まあ、物語のアウトラインというか登場人物の関係なんかはなんとなく飲み込めたのでもういいかな、と。
その時の私の理解では「ワイルド・スピード」という作品はサーフィンを車に置き換えた「ハートブルー」だろう、キアヌ・リーブスの役がポール・ウォーカーでヴィン・ディーゼルがパトリック・スウェイジだな、という感じでした。

続編の2はテレビで最初の方だけ見てすぐチャンネル変えちゃったし、3に至っては見ようとも思いませんでした。この作品って元が「ハートブルー」なんだから、だったら男同士の二人の関係が一番重要なわけで、ヴィン・ディーゼルとポール・ウォーカーのどちらが欠けても成立しないんですよ。

そういう意味ではこの4作目、「ワイルド・スピードMAX」こそが最初の「ワイルド・スピード」の正統な続編にあたるわけです。だったら見てもいいかな、アメリカの興行でもいい線いってるし、外すことはないだろうと思って試写会に応募したのですね。

これがもう、期待を遙かに上回るおもしろい作品でした!

似たような作品の「96時間」「トランスポーター3」とほぼ連続するような形で見ていたのにも関わらず、「ワイルド・スピードMAX」も全く飽きることなく存分に楽しめたというのがまずビックリですよ。普通、「二度あることは三度ある」の三度目って少々うんざりいささかゲンナリになるものなんですが、そういう部分が全然なかった。逆に全二作が単調に思えてくる程、こちらの方が深みのある作品に仕上がっていましたね。いろんな要素の匙加減が絶妙なんです。それも薄味ではなくってね、酢飯のようにお砂糖で甘さと酢の酸っぱさが上手い具合に互いの強さを打ち消しあって一つの味を構成している感じかな。

料理で例えるならば「96時間」はレアステーキ。多少の野菜は添えられてるかもしれないけど、無視してOK。肉の味そのものと塩こしょうで勝負。
「トランスポーター3」は上等なハンバーガー。バンズ(パン)とパティ(肉)がそれぞれのうまみをひきたてあい、間に挟まっているレタスが風味を、パンの上のセサミが多少の刺激を与えてくれる感じ。
「ワイルド・スピードMAX」は巻き寿司。酢飯と具が海苔で巻かれて綺麗に一つの作品に仕上げられた調和の傑作。

ストーリーの面から語ると要約した段階で三作品ともほぼ同じになっちゃうんだけど、作品の味わいはことほどさように違うので三連続で見ても胸焼けも胃もたれもしなかったのでしょう。

それにしても今更ながら残念なのは「ワイルド・スピード」をちゃんと見ていなかったこと! 「MAX」を見た今ならきっと一作目も最初から最後までテレビで見ることができると思うんですよね~。

カーレースやクラッシュの激しさスゴさはやはり一度大画面で見ておかなければダメみたいです。一度スクリーンで見てインプットしておけば、次にテレビで見る時にその迫力の物足りなさを大画面&大音響の記憶を蘇らせることで補完することができるのでしょうが、最初が小さい画面と控えめな音量ではそれ以上に想像をふくらませることができないというか。単に自分自身の能力の限界かもしれないですが。

でも最初に「ワイルド・スピード」を見た時とでは、実は私自身が全然違ってるんです。というのも、ヴィン・ディーゼルとポール・ウォーカーの魅力に目覚めたのが割と最近なもので。

ヴィンちゃんは「キャプテン・ウルフ」で笑わせてもらい、ポールには「ワイルド・バレット」で本当に感心させられました。どちらも他人の子どもの将来を真剣に心配することのできる役でした。自分の子どもを愛するのは言ってみれば利己的な行為ですが、他人の子どものために命を賭けるというのは利他的な行動なんですよ。二人ともそういう役ができる、いわば似たもの同士。

そういう二人ですから、役の上で「ワイルド・スピード」で友人になり、「ワイルド・スピードMAX」で再びタッグをとるのも実に自然な展開なんですよね。見ていて全然違和感がない。

その上でちょっとした謎解きがあってサスペンス性も充分なんです。これは「シリーズもの」といっても次々に主役が交代する変則的な作りですからね、次はこうなるという決まった展開はないのです。

まるですごろくのように、賽が投げられるまで次にどういう展開をするのかが分からない。これで観客をストーリーの最後まで不安というサスペンスを抱えたまま突っ走れるのです。

いや、ほんと、最後の最後まで楽しめる映画でした。
公開されたら是非劇場でお楽しみ下さい。