「正義のゆくえ I.C.E. 特別捜査官」 公式サイト
邦題についている「I.C.E.」、公式サイトには「移民税関捜査局」として載っていますが、映画の中では「移民局」と言われていたようです。
「移民局」というと、まあテレビや映画での使われ方は不法就労とおぼしき非白人系の人を脅して情報を得たい時によく使われるアレですね、「喋らないとお前の事を移民局に通報するぞ」ってヤツ。
或いは昨今よく見るのは大きな工場にすし詰め状態で働いている労働者達が
「移民局が来た!」
と言われるて蜘蛛の子を散らすように逃げていくシーン。
なんというか、今まで見たようなドラマや映画だと「移民局」って、すでにアメリカ社会の中に必要な労働力として組み込まれている不法滞在の外国人を彼らの事情も聞かずに逮捕して有無を言わせず国外退去させる存在という印象でした。突然一カ所にわらわらと湧いてきて、逃げていく人達をあたるを幸いの勢いで誰彼なく捕まえていく血も涙もない連中。
「移民局」というのは昔からあったんですが、こんな強制捜査が行われるようになったのはどうやら「911」のあとで組織が再編されてからのようです。
「ICE」
>
内容は少々古いですが参考ページはこちら 。
この作品でハリソン・フォードが演じているのが「ICE」の特別捜査官なので、まあ要するにアメリカ人の中に紛れ込んでいる非アメリカ人を見つけ出して摘発するのが彼のお仕事なわけです。
「ブレードランナー」でハリソンがやっていたのが人間の中に紛れ込んでる非人間(レプリカント)を見つけ出して追い詰める仕事でしたから、あんまり変わってないというか原点に戻ったというか。
途中、「デビル」などでも似た感じの役割を演じてましたが、この時は「熱血」でしたが「正義の行方」だと「人情」の方に性格がよりシフトしていました。確か「ブレードランナー」では最初「冷徹」が売りのはずだったんですが、25年たつうちに彼も丸くなるのね、と。追い詰めて殺すだけではなく、話を聞く余裕も生まれたのねと思ったりして。
もっとも夕べWOWOWで放映していた「ブレードランナー(ファイナルカット)」を見るとデッカードは常に相手の話に耳を傾けてやりたそうな雰囲気を漂わせていましたから、25年たってようやくあの頃やりたくてもできなかったことができるようになったのかもしれません。「正義のゆくえ」にハリソン・フォードが出演したという事にはそういう意味もあるのかも。
というのはこの作品、ハリソン・フォードが出演していても彼だけが主役というわけではないんです。これは群像劇で、たとえるなら以前アカデミー賞に輝いた「クラッシュ 」に近いです。様々な登場人物が出てきて、彼らの組み合わせが別の登場人物の組み合わせとどこかでちょっとずつ関わり、一つのドラマを構成していくという筋書き。
この脚本がとてもよくできていて、「911」以降の不法滞在者の境遇や扱われ方が手に取るようにわかります。メキシコ国境あたりの話では「BABEL」を彷彿とさせらたり、東洋系の少年のエピソードではちょっと「グラン・トリノ」を思い出したりして。アメリカにおけるメキシコ人や東洋系って大体こんなイメージなんでしょうかね。でも群像劇という点でははっきり言って「BABEL」より「正義のゆくえ」の方がよほどおもしろいし感情移入もしやすかったです。
幸か不幸か、「正義のゆくえ」の中には日本人は出てこなかったしね。
感情移入しつつ、でも客観的に見られるという点でこの作品の鑑賞に関しては日本人は恵まれてるといえましょう。
アメリカ人やこの作品で扱われた国の方々にとっては受け入れがたい部分が多々あるのかもしれませんが。
それでも私はこの作品は上手くまとめられ、登場人物それぞれに彼らにふさわしい決着をつけた、よくできたストーリーだったと思います。
映画を見ていて、ああ、この脚本を書いた人も移民としてアメリカにやってきたんだろうなあと思わされたセリフがあったのですが、脚本は監督のウェイン・クラマー自身が書いていて、その彼は南アフリカ出身だったので大変納得しました。
ハリソン・フォードはもちろんアメリカ生まれのアメリカ人役ですが、この映画の中にはアメリカ生まれじゃないアメリカ人も、両親は不法滞在でもアメリカ生まれなので自動的にアメリカ人になった人も出てきます。「アメリカ人」と一言でいってもいろいろな人々が含まれることが分かっただけでもこの作品を見た価値はありました。
こう書くと難しいように思われるかもしれませんが、「正義のゆくえ」はまずエンターテインメントとして作られているので飽きることなく最後までおもしろく見ることができます。
どうぞお見逃しなく。
邦題についている「I.C.E.」、公式サイトには「移民税関捜査局」として載っていますが、映画の中では「移民局」と言われていたようです。
「移民局」というと、まあテレビや映画での使われ方は不法就労とおぼしき非白人系の人を脅して情報を得たい時によく使われるアレですね、「喋らないとお前の事を移民局に通報するぞ」ってヤツ。
或いは昨今よく見るのは大きな工場にすし詰め状態で働いている労働者達が
「移民局が来た!」
と言われるて蜘蛛の子を散らすように逃げていくシーン。
なんというか、今まで見たようなドラマや映画だと「移民局」って、すでにアメリカ社会の中に必要な労働力として組み込まれている不法滞在の外国人を彼らの事情も聞かずに逮捕して有無を言わせず国外退去させる存在という印象でした。突然一カ所にわらわらと湧いてきて、逃げていく人達をあたるを幸いの勢いで誰彼なく捕まえていく血も涙もない連中。
「移民局」というのは昔からあったんですが、こんな強制捜査が行われるようになったのはどうやら「911」のあとで組織が再編されてからのようです。
「ICE」
>
ICE(アイス) Immigration and Customs Enforcement イミグレーション・アンド・カスタムス・エンフォースメント 2002年11月に新しく設立されたのDHSの中のひとつの組織で国境警備および合衆国内の保安保持を担う役割をしています。旧イミグレーションとカスタ ムスが統合された組織で麻薬や武器その他を国内に違法に持ち込まれるものを摘発にあたります。現在ではFBI、DEA、等同様に犯罪者が恐れる組織であ る。 |
内容は少々古いですが参考ページはこちら 。
この作品でハリソン・フォードが演じているのが「ICE」の特別捜査官なので、まあ要するにアメリカ人の中に紛れ込んでいる非アメリカ人を見つけ出して摘発するのが彼のお仕事なわけです。
「ブレードランナー」でハリソンがやっていたのが人間の中に紛れ込んでる非人間(レプリカント)を見つけ出して追い詰める仕事でしたから、あんまり変わってないというか原点に戻ったというか。
途中、「デビル」などでも似た感じの役割を演じてましたが、この時は「熱血」でしたが「正義の行方」だと「人情」の方に性格がよりシフトしていました。確か「ブレードランナー」では最初「冷徹」が売りのはずだったんですが、25年たつうちに彼も丸くなるのね、と。追い詰めて殺すだけではなく、話を聞く余裕も生まれたのねと思ったりして。
もっとも夕べWOWOWで放映していた「ブレードランナー(ファイナルカット)」を見るとデッカードは常に相手の話に耳を傾けてやりたそうな雰囲気を漂わせていましたから、25年たってようやくあの頃やりたくてもできなかったことができるようになったのかもしれません。「正義のゆくえ」にハリソン・フォードが出演したという事にはそういう意味もあるのかも。
というのはこの作品、ハリソン・フォードが出演していても彼だけが主役というわけではないんです。これは群像劇で、たとえるなら以前アカデミー賞に輝いた「クラッシュ 」に近いです。様々な登場人物が出てきて、彼らの組み合わせが別の登場人物の組み合わせとどこかでちょっとずつ関わり、一つのドラマを構成していくという筋書き。
この脚本がとてもよくできていて、「911」以降の不法滞在者の境遇や扱われ方が手に取るようにわかります。メキシコ国境あたりの話では「BABEL」を彷彿とさせらたり、東洋系の少年のエピソードではちょっと「グラン・トリノ」を思い出したりして。アメリカにおけるメキシコ人や東洋系って大体こんなイメージなんでしょうかね。でも群像劇という点でははっきり言って「BABEL」より「正義のゆくえ」の方がよほどおもしろいし感情移入もしやすかったです。
幸か不幸か、「正義のゆくえ」の中には日本人は出てこなかったしね。
感情移入しつつ、でも客観的に見られるという点でこの作品の鑑賞に関しては日本人は恵まれてるといえましょう。
アメリカ人やこの作品で扱われた国の方々にとっては受け入れがたい部分が多々あるのかもしれませんが。
それでも私はこの作品は上手くまとめられ、登場人物それぞれに彼らにふさわしい決着をつけた、よくできたストーリーだったと思います。
映画を見ていて、ああ、この脚本を書いた人も移民としてアメリカにやってきたんだろうなあと思わされたセリフがあったのですが、脚本は監督のウェイン・クラマー自身が書いていて、その彼は南アフリカ出身だったので大変納得しました。
ハリソン・フォードはもちろんアメリカ生まれのアメリカ人役ですが、この映画の中にはアメリカ生まれじゃないアメリカ人も、両親は不法滞在でもアメリカ生まれなので自動的にアメリカ人になった人も出てきます。「アメリカ人」と一言でいってもいろいろな人々が含まれることが分かっただけでもこの作品を見た価値はありました。
こう書くと難しいように思われるかもしれませんが、「正義のゆくえ」はまずエンターテインメントとして作られているので飽きることなく最後までおもしろく見ることができます。
どうぞお見逃しなく。