>第10回東京フィルメックスが11月21日、開幕。東京・御茶ノ水の明治大学アカデミーホールでは、北野武 監督が第10回記念シンポジウムに登壇し、特別講義を行なった。
監督デビューから20年、今や「世界のキタノ」と呼ばれるようになった北野監督。初期のころは苦労も多かったようで、「映画界はおごり高い人が多 く、よそ者に冷たい。『素人なんかに撮れるわけがない』と思われていた。オレのことを“監督”と呼ぶのはヤクザだけ」と自虐的に笑った。さらに、「テレビ は妥協せずに作っているけれど、映画は妥協してつくっている部分がある。お金を払って見てもらうものだし、あまり独りよがりなものを押しつけるべきではな いから」と意外な持論を展開。これには、長年にわたり北野作品に携わってきた森昌行 プロデューサーも「新鮮ですね」と驚いていた。
そして、「昔は演芸場で毎日ネタを変えていたので、映画でもそうしてきたけれど、疲れ果てちゃって(笑)。今は(原点でもある)ヤクザ映画を撮って いますが、面白くて仕方ない」と現在製作中の15本目の新作(タイトル未定)について言及。キャスティングに関しても、悪役のイメージがついていない三浦友和 、椎名桔平 、加瀬亮 、北村総一朗 を起用し、「これまで割と同じ俳優さんと仕事をしてきたけれど、今回は全部入れ替えています」とうれしげに語った。
その後、ホームページに寄せられた質問に答えるコーナーでは「クリント・イーストウッド の『グラン・トリノ 』 をどう思うか?」との質問に、「つまんなかった。老人と青年の触れ合いのきっかけの描写がヘタ」とバッサリ。司会者から、「これまで殺す側を演じてきた イーストウッドが殺される側に回った、俳優として最後の作品になるかもしれない」という紹介を聞き、「今やっている作品のことを考えると……ちょっとド キッとするなあ」と意味深発言。これまで監督と俳優を兼任してきた監督だが、今のところ監督に専念するという選択肢はないようで「森繁(久彌)さんみたい に“ただいるだけ”って俳優もいいかな。ほかの人の作品に出演して、わざとヘタに演技して映画をダメにしてやりたい」と最後まで毒舌は衰えず、会場は大爆 笑だった。
第10回東京フィルメックスは11月29日まで開催中。