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ま、私の人生はとっぱなで躓いてるんで、その後はもうまっしぐらに坂を転がり落ちてきただけですから今更振り返ったところで見えるものは何もないんですが。

しかし一般的には人生というものには岐路(
本通りから分かれたわき道。横道   事の本筋から外れていること。横道。「議論が―にそれる」)がつきものらしいですね。このたびモニター当選したのも「あなたの人生の岐路を教えてください!」というテーマで『就活って何だ 人事部長から学生へ』(森 健・著 文藝春秋新書)という本のある一章を読んでレビューするというものでしたから。


『就活って何だ 人事部長から学生へ』(森 健・著)

この本のふれこみは

JR東海、全日空、三井物産、サントリー、資生堂、三菱東京UFJ等、超人気企業15社の現職人事部長が「本当に欲しい人材」から「採用の舞台裏」まで本音で語ってくれました。彼らの話に共通なのは「就活マニュアルに惑わされるな」。では、どうすればいいのか? その答えが本書にはあります。具体的な事例満載で、学生には「社会人になるための教科書」として、また企業側にとっては「実践型人材育成論」として、必読の書です。

というもの。
有名企業が学生を採用する際、その人事部長が具体的に何を考えているのかが本人の口から語られる(ように書かれている)のが興味をひきますね。

私が頂いたのはサントリーの章で、10ページぐらいなのですぐに読んでしまいました。

まず、提出されるエントリーシート(WIKI :就職活動
において
、大企業や一部の中堅企業が独自に作成した応募用紙)
が約1万5千人分で、それを複数の採用担当者が全部目を通しているということに感心しました。採用する側も真剣勝負だということですね。

で、ここに出てくるのが上記の「マニュアル頼みではもったいない」という記述。学生さんそれぞれの個性が伝わるように、ぜひ思いっきり自分らしさを表現してほしいと思いますと書いてあります。

まあ、読む方は総数約1万5千ですからね。
せっかく本腰いれて読んでいるのに全部がマニュアル本通りの似たような内容じゃ、そりゃ飽きますわね。ここでまず目立つには、自分の言葉による個性あふれた表現が必要とされるということなのでしょう。

エントリーシートの後は集団面接、面接の合間に面談、最終面接へと進んでいくわけですが、ここで担当者が学生さんの何を見ているかというと、要はその人が「どれだけ本気でサントリーに入社したいのか、どれだけ真剣にサントリーで働きたいのか」なんですよ。入社する前から愛社精神を測られていると申しましょうか。

「愛社精神」なんて書いちゃうと、「会社のために身を捨てて尽くす滅私奉公の覚悟」なんぞと思われてしまいそうですが、サントリーの愛社精神はそれとは違って創業の精神である「やってみなはれ」の心意気ですね。その心意気を持ち続け、いついかなる場所でもそれをサントリーのために発揮することができる、その可能性の有無が採用を決める鍵となっているようです。

それを判断するのは一人ではなく何人もの採用担当者ですが、やはり担当者との間によい人間関係を築けた人は強い感じですね。結局は人間性がものをいうというか、人物重視で採用を決めているのだとこの本には書かれています。


――ま、本に書かれていることですから、全てが真実とは限りません。こういった文章は幾らでも書き直して体裁を取り繕えるものですし、聞き書きであればインタビューされる側は本音を語ると言いつつも普段と違う言葉づかいで考えながら喋っているものですからね。

だからここまでで語られていることはどっちかというと建前です。もちろん嘘ではないでしょうし、実際にその通りの事が行われているに違いないとは思いつつ、でもちょっとばかり綺麗事で塗り固められて終わっちゃったな感が微妙に漂います。

おもしろいのはこの後。

人事部長氏ご自身がサントリーに入社したいきさつを語られてます。

それによると大学時代に所属していたラグビーサークルの先輩がサントリーにいて、その関係で大学時代からサントリーでしばしばアルバイトをしたり会社に出入りしたりする内に社風がすっかり気に入ってしまい、元々は教員志望だったのをやめてその先輩に相談して面接を受けさせて貰って、運よく入社することができた、と。
それ、思いっきりコネだと思いますが。
体育会系の人脈って、やっぱり強いですよね~。

無論、人事部長氏が入社したのはずっと昔のことで今とは時代が違いますが、結局ここでも出てくるのは人間関係の強さですよ。部長氏、在学当時から先輩に何くれとなく面倒みて貰ってた、すなわち可愛がって貰ってたってことでしょ。先輩は先輩で、おそらく後輩の部長氏の事を「こいつは見所がある」と睨んでいたのでしょう。仕事以前にもっと近い関係で互いの人間性を深く知る事ができていたというのが強みだったんですよね。

突きつめて言うなら、サントリーで重視されるのは人間性ということになります。これは、優秀でも人間性に問題があれば採用しないということであって、人間性さえ良ければ誰でもいいというのとは違うと思いますが、まあ、人物重視というのが一応本音でも語られているわけです。


もうそう言われちゃうと、たとえば私のように人間性に問題のある者は最初からはじかれているわけですよ。

私が読んだのは先ほども書きましたがサントリーだけです。
しかしこの本のふれこみには
彼らの話に共通なのは「就活マニュアルに惑わされるな」
と書いてある。
ということは、恐らくほとんどの会社がサントリー同様、採用にあたっては人物重視をうたっていると思うのですよね、少なくとも建前上は。

じゃあそこで重要視されている人間性って何なの、ってことになります。

サントリーの場合は「やってみなはれ」の精神でした。
これが具体的にどういう事を指しているかというと、どうやらチャレンジ精神とか粘り強さとか逆境に遭っても挫けない心とか多角的な視野とか……そう、めちゃくちゃハードル高いこと言ってるんですよ、実は。

さらっと書いてるけど、求めている人物像って、絶対普通の人間じゃないですよ、これ。
単に勉強ができるとかスポーツが得意とか、そういった分野を超えて総合的に優れた人間を求めてるんです。

そりゃー応募した大多数の人が落ちて当然だわと思ってしまう。

そして、サントリーであれ他の会社であれ、強いのはこういったずば抜けて優秀な人材を集めている企業なんだなと納得してしまいます。


さてそこで元々の本のタイトルに戻って「就活とは何だ」という事になると、結論は自ずと出ます。

若い内に自分を磨け、人間性を養えってことですね。

もうそれは昔から、「若い内の苦労は買ってでもしろ」とか「鉄は熱いうちに打て」とか「玉は磨かなければ光らない」とかいろんな表現で言われてきていることなんですけど、この期に及んでも尚言い続けなければいけないことでもあるんですね。

それは大切なことですが、しかし私はあえて一言いいたい。

そんなもの、就活に直面してからいきなり自分を磨けとか言われても無理だって!


ってゆーか、大企業に就職するために磨く人間性ってどうよ、みたいな。


結局のところ、「人物重視」だ「人間性」だといっても、その漠然としたものの中から企業それぞれが重要視してピックアップするものは違うはずなので、一般的なイメージで「豊かな人間性」なんてのを形成したところでそれが企業のニーズに合致するとは限らないわけです。


所詮は、自分の「人間性」が採用担当者にどれだけ評価されるかなのよね。

それは結局一対一の人間関係をいかに上手く結べるかにかかっていることで、現在の就職試験のやり方では短時間でそれをやってのける人が有利ということになるのではないでしょうか。人間的に圧倒的にすぐれた人は別として。

でもそれは、普通レベルな人間性を有していても人間関係を結ぶのが下手な人は現代の就職戦線において不利ということなのだよね。


その辺のことがこの本で取り上げられているのかどうか、是非現物を手にとって確かめたいところです。

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