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より(以下一部抜粋)
>08年1月に急死したヒース・レジャーさんの最後の出演作「Dr.パルナサスの鏡」が23日、公開された。メガホンを取ったのは、「未来世紀ブラジ ル」(85年)や「ブラザーズ・グリム」(05年)などの作品で知られるテリー・ギリアム監督。重要な役を担うレジャーさんの急死で製作中止が危ぶまれた が、ギリアム監督とレジャーさんの友人のジョニー・デップさん、ジュード・ロウさん、コリン・ファレルさんらの協力によって、完成にこぎつけた。レジャー さんへの思いや、出演者についてギリアム監督に話を聞いた。【りんたいこ/フリーライター】
【写真特集】ご機嫌で写真に納まるテリー・ギリアム監督のインタビュー中のカット
「Dr.パルナサスの鏡」は、「娘が16歳になったら差し出す」という悪魔との取引によって不死を手に入れたパルナサス博士(クリストファー・プラマー さん)が、娘の16歳の誕生日が数日後に迫り、悪魔の再訪におびえながら、娘を守ろうとする姿を描いたミステリアスなファンタジーだ。レジャーさんは、パ ルナサス博士に協力する記憶喪失の若者トニーを演じている。博士が持つ不思議な鏡を通り抜けると、そこには人間の欲望を具象化する世界が広がり、トニーの 容姿は、レジャーさんから、デップさん、ロウさん、ファレルさんへと変容する。
--トニーは、元々はレジャーさんが一人で演じるはずの役でした。デップさんら3人を新たにキャスティングするに際して、トニー像を変更したのですか。
微調整はしたけど、脚本の本質的な部分を変更する必要はなかった。鏡を通り抜けると世界が変わってしまうわけだからね。ジョニーが出てくるところは、(彼が誘い出した)中年女性の理想の男性像がヒースではなくジョニーだった、そう考えれば何の問題もなかった。
--後半にいくに従って、トニーのダークな面が見えてきます。“3番目のトニー”をファレルさんが演じているのは、他の2人の俳優よりも悪い雰囲気が強いからですか。
そういうわけじゃないよ(笑い)。ただ、ジョニーというのは、どちらかというとはかないところがある。だから、人を誘惑するジゴロみたいな役にぴったり なんだ。その点で、今回の彼のイメージには、「ベニスに死す」の(ダーク・)ボガードを思い出させるものがある。一方、コリンは、ジョニーに比べると存在 感がガッシリしているから、邪悪な面を強調できると思ったんだ。彼は、危険でダークなものを持ち合わせていて、ビクトリア調時代の悪役そのものみたいなと ころがある。さらに、ジュードは、非常にエネルギーがあるので、あの(2番目の)部分にしたんだ。とはいえ正直なところ、今回、ジョニーは「パブリック・ エネミーズ」の撮影が入っていて、1日半しか空いていなかった。長いシーンの撮影はできないから、(他の2人よりも短い)1番目のシーンに出てもらった。 僕は自分のことをプラグマティック(実用的)な人間だと思っている。いつも、これを作るためにはどうすればいいかと冷静に考えてやっているんだ。でも、そ れにみんなが気付いてくれないのは、どうしてなんだろう(笑い)。でも、まじめな話、ヒースではないトニーの1人目がジョニーで、それを観客が受け入れる ことができれば、他の2人は顔が違っても受け入れてもらえるという算段はあった。
--改めて、レジャーさんの俳優としての偉大さを教えてください。
彼は、ルックスはいいし、映画スターらしい風貌(ふうぼう)をしている。声もすばらしくて、俳優として恐れ知らず。また、奇妙なことにどんな年齢の役も 演じられる。それに、いつも学ぼうという姿勢を持っていた。とにかく、一言ではいい尽くせない魅力にあふれた人物だった。
--この物語は、想像力の大切さや、選択とそれに伴う犠牲についての話だと解釈しました。
おっしゃる通り。だけど、質問に対する答えが簡単過ぎるなんて思わないでほしい(笑い)。この作品の取材は、今回の日本が最後なんだ。これまであまりに もいろんな話をし過ぎて、正直、自分でも何をいってきたのか分からなくなっている。だから、いまここで余分な言葉を付け加えるのではなく、あなたの言った 通りだと返事をするにとどめておく(笑い)。
--あなたには、ピンチのときに、協力してくれる俳優がいますね。ファンもたくさんいる。にもかかわらず、常に資金難に苦しみ、過去には、映画会社に作品のラストを改変されるなどの憂き目にあっています。なぜなのでしょう?
取材のみなさんがその部分をクローズアップするから、そう思われるのであって、そのニュースを、僕自身は真実だとは思っていないし、困難とも思っていな いんだ。だけど、僕としては、そういうニュースによって、「テリー・ギリアムって面白い」と思ってもらえるわけだから、大いに書いてくださいという感じな んだ(笑い)。
--本人は苦労と感じていないと?
その通り。(スティーブン・)スピルバーグや(ジョージ・)ルーカス、マイケル・ベイでない限り、映画作家はみんな同じだよ。常に資金集めに苦労してい るし、自分のビジョンに介入してくるものと戦い続けている。その意味では、今回の作品は、典型的な映画監督の生活や苦しみを象徴しているといえると思う。 僕は単に、他の人に比べて、自分の困難を宣伝するのがうまいだけなんだよ(笑い)。
<プロフィル>
1940年、米ミネソタ州生まれ。「モンティ・パイソン」(69~73年)シリーズで映像作家としての経歴をスタート。81年「バンデットQ」を製作 し、85年の「未来世紀ブラジル」は世界中の映画ファンから支持され、映画史に残るSF作品となった。一筋縄ではいかない複雑なストーリーとファンタジッ クな映像が持ち味。主な作品に「バロン」(89年)、「フィッシャー・キング」(91年)、「12モンキーズ」(95年)、「ラスベガスをやっつけ ろ」(98年)、「ローズ・イン・タイドランド」(05年)など。ドン・キホーテにまつわる映画を作るのが悲願で、撮影中のトラブルで製作中止に追い込ま れた「The Man Who Killed Don Quixote」の製作再開と完成が待たれる。
「Dr.パルナサスの鏡」公式サイト http://www.parnassus.jp/
>08年1月に急死したヒース・レジャーさんの最後の出演作「Dr.パルナサスの鏡」が23日、公開された。メガホンを取ったのは、「未来世紀ブラジ ル」(85年)や「ブラザーズ・グリム」(05年)などの作品で知られるテリー・ギリアム監督。重要な役を担うレジャーさんの急死で製作中止が危ぶまれた が、ギリアム監督とレジャーさんの友人のジョニー・デップさん、ジュード・ロウさん、コリン・ファレルさんらの協力によって、完成にこぎつけた。レジャー さんへの思いや、出演者についてギリアム監督に話を聞いた。【りんたいこ/フリーライター】
【写真特集】ご機嫌で写真に納まるテリー・ギリアム監督のインタビュー中のカット
「Dr.パルナサスの鏡」は、「娘が16歳になったら差し出す」という悪魔との取引によって不死を手に入れたパルナサス博士(クリストファー・プラマー さん)が、娘の16歳の誕生日が数日後に迫り、悪魔の再訪におびえながら、娘を守ろうとする姿を描いたミステリアスなファンタジーだ。レジャーさんは、パ ルナサス博士に協力する記憶喪失の若者トニーを演じている。博士が持つ不思議な鏡を通り抜けると、そこには人間の欲望を具象化する世界が広がり、トニーの 容姿は、レジャーさんから、デップさん、ロウさん、ファレルさんへと変容する。
--トニーは、元々はレジャーさんが一人で演じるはずの役でした。デップさんら3人を新たにキャスティングするに際して、トニー像を変更したのですか。
微調整はしたけど、脚本の本質的な部分を変更する必要はなかった。鏡を通り抜けると世界が変わってしまうわけだからね。ジョニーが出てくるところは、(彼が誘い出した)中年女性の理想の男性像がヒースではなくジョニーだった、そう考えれば何の問題もなかった。
--後半にいくに従って、トニーのダークな面が見えてきます。“3番目のトニー”をファレルさんが演じているのは、他の2人の俳優よりも悪い雰囲気が強いからですか。
そういうわけじゃないよ(笑い)。ただ、ジョニーというのは、どちらかというとはかないところがある。だから、人を誘惑するジゴロみたいな役にぴったり なんだ。その点で、今回の彼のイメージには、「ベニスに死す」の(ダーク・)ボガードを思い出させるものがある。一方、コリンは、ジョニーに比べると存在 感がガッシリしているから、邪悪な面を強調できると思ったんだ。彼は、危険でダークなものを持ち合わせていて、ビクトリア調時代の悪役そのものみたいなと ころがある。さらに、ジュードは、非常にエネルギーがあるので、あの(2番目の)部分にしたんだ。とはいえ正直なところ、今回、ジョニーは「パブリック・ エネミーズ」の撮影が入っていて、1日半しか空いていなかった。長いシーンの撮影はできないから、(他の2人よりも短い)1番目のシーンに出てもらった。 僕は自分のことをプラグマティック(実用的)な人間だと思っている。いつも、これを作るためにはどうすればいいかと冷静に考えてやっているんだ。でも、そ れにみんなが気付いてくれないのは、どうしてなんだろう(笑い)。でも、まじめな話、ヒースではないトニーの1人目がジョニーで、それを観客が受け入れる ことができれば、他の2人は顔が違っても受け入れてもらえるという算段はあった。
--改めて、レジャーさんの俳優としての偉大さを教えてください。
彼は、ルックスはいいし、映画スターらしい風貌(ふうぼう)をしている。声もすばらしくて、俳優として恐れ知らず。また、奇妙なことにどんな年齢の役も 演じられる。それに、いつも学ぼうという姿勢を持っていた。とにかく、一言ではいい尽くせない魅力にあふれた人物だった。
--この物語は、想像力の大切さや、選択とそれに伴う犠牲についての話だと解釈しました。
おっしゃる通り。だけど、質問に対する答えが簡単過ぎるなんて思わないでほしい(笑い)。この作品の取材は、今回の日本が最後なんだ。これまであまりに もいろんな話をし過ぎて、正直、自分でも何をいってきたのか分からなくなっている。だから、いまここで余分な言葉を付け加えるのではなく、あなたの言った 通りだと返事をするにとどめておく(笑い)。
--あなたには、ピンチのときに、協力してくれる俳優がいますね。ファンもたくさんいる。にもかかわらず、常に資金難に苦しみ、過去には、映画会社に作品のラストを改変されるなどの憂き目にあっています。なぜなのでしょう?
取材のみなさんがその部分をクローズアップするから、そう思われるのであって、そのニュースを、僕自身は真実だとは思っていないし、困難とも思っていな いんだ。だけど、僕としては、そういうニュースによって、「テリー・ギリアムって面白い」と思ってもらえるわけだから、大いに書いてくださいという感じな んだ(笑い)。
--本人は苦労と感じていないと?
その通り。(スティーブン・)スピルバーグや(ジョージ・)ルーカス、マイケル・ベイでない限り、映画作家はみんな同じだよ。常に資金集めに苦労してい るし、自分のビジョンに介入してくるものと戦い続けている。その意味では、今回の作品は、典型的な映画監督の生活や苦しみを象徴しているといえると思う。 僕は単に、他の人に比べて、自分の困難を宣伝するのがうまいだけなんだよ(笑い)。
<プロフィル>
1940年、米ミネソタ州生まれ。「モンティ・パイソン」(69~73年)シリーズで映像作家としての経歴をスタート。81年「バンデットQ」を製作 し、85年の「未来世紀ブラジル」は世界中の映画ファンから支持され、映画史に残るSF作品となった。一筋縄ではいかない複雑なストーリーとファンタジッ クな映像が持ち味。主な作品に「バロン」(89年)、「フィッシャー・キング」(91年)、「12モンキーズ」(95年)、「ラスベガスをやっつけ ろ」(98年)、「ローズ・イン・タイドランド」(05年)など。ドン・キホーテにまつわる映画を作るのが悲願で、撮影中のトラブルで製作中止に追い込ま れた「The Man Who Killed Don Quixote」の製作再開と完成が待たれる。
「Dr.パルナサスの鏡」公式サイト http://www.parnassus.jp/