シネマトゥデイ より(以下一部抜粋)

第67回ゴールデン・グローブ賞の授賞式がロス時間1月17日(日)、ビバリーヒルトンホテルで開催され、『アバ ター』が他の有力候補を押しのけて、作品賞と監督賞の主要2部門に輝いたが、ゴールデン・グローブ賞を振り返りつつ、今年のアカデミー賞の行方を考察して みた。

 今年のゴールデングローブ賞の授賞式は、あいにくの雨のなか、傘をさしてレッドカーペットを歩くスターが目立った。また、ハイチ地震救済活動を応援するリボンをつけるセレブも多く、例年より控えめな雰囲気が漂う開催となった。

 そんな中、今年の一番の注目点は、ジェームズ・キャメロン監督のSF作品『アバター』が他の有力候補を押しのけて、作品賞と監督賞の両方に輝いたことだ ろう。もともとSF作品は主要部門で受賞しにくい。しかも、対戦相手には、最多6部門ノミネートのジョージ・クルーニー主演『マイレージ、マイライフ』 や、数々の賞を受賞しているキャスリン・ビグロー監督『ハート・ロッカー』、タランティーノ監督の集大成とも言える『イングロリアス・バスターズ』が並ん でいた。しかし、後半からぐんぐん勢いをつけた『アバター』が、ほかの作品をどうどうと追い抜く結果となった。


 技術、質ともに、「まれに見る画期的な作品」と、米批評家たちの間でも評判が高い『アバター』。この勢いのまま、アカデミー賞でも作品・監督賞や その他の賞を総なめにし、今年はアバターの年になるのではないか。前代未聞の3D技術やCGを駆使しながら、それに振り回されない力強い作品をつくり上げ たキャメロン監督の技量はじゅうぶんに評価に値する。

 ちなみに、『アバター』はつい昨日世界興行収入が18億5,500万ドル(約1,669億円)を超え、『タイタニック』の持つ記録18億4,800万ドル(約 1,663億円)を11年ぶりに抜いて全世界興収歴代1位に輝いた。(1ドル=90円で計算)。


 また、今回、監督部門でキャメロン監督の対戦相手となった『ハート・ロッカー』のキャスリン・ビグロー監督は、キャメロン監督の元奥さんだ。元妻 と競争相手になってしまったキャメロン監督は、受賞した瞬間、「実はキャスリン(元妻)が取ると思っていたので、驚いた」とコメントし、緊張感を和らげる コメントが印象的だった。


 そのほか、俳優部門に関しては、「長年の努力が日の目を見る」結果が目立った。ドラマ部門の主演男優賞受賞者ジェフ・ブリッジスは、長年ハリウッ ドで活躍してきたが、その割には、主要な賞にずっと恵まれなかった。しかし、今回は『クレイジー・ハート』のアル中のカントリー歌手を熱演。すでに61歳 なだけに、「このへんでそろそろ取らせてあげたい」という会員たちの気持ちも反映されたのではないか。受賞瞬間、観客全員が総立ちで拍手を送った。


 また、ドラマ部門のサンドラ・ブロックも同じことが言える。今までラブコメ出演が多かったせいか、実力のわりにはドラマ部門での評価は薄かった。 しかし、『しあわせの隠れ場所』では、黒人青年をフットボール選手に育てあげた中年の女性を熱演し、大きくイメージチェンジを図っての受賞。また、ミュー ジカル・コメディー部門の主演男優賞受賞者のロバート・ダウニーJr.も、ドラッグなどの使用で長年路線を踏み外していたが、近年『アイアンマン』などで のカムバックしたこともあり、今回『シャーロック・ホームズ』の主役で評価された。


 一方、ミュージカル・コメディー部門のメリル・ストリープは、ゴールデン・グローブ賞を6回も受賞している大御所。しかし、『ジュリー&ジュリ ア』でのストリープの人気料理研究家役の演技は、無視できないほどオリジナリティに富み、愛らしかった。彼女は、ここ数年、ミュージカルやコメディーに軒 並出演しており、61歳になってますます輝き始めた感がある。しかし、アカデミー賞では、ノミネートはされるが、受賞はどうだかわからない。

 そのほか注目すべき点は、クエンティン・タランティーノ作品『イングロリアス・バスターズ』でナチスの大佐を演じて、助演男優賞を受賞したクリストフ・ ヴァルツだ。彼の演じた残忍かつチャーミングなナチス役は強烈な印象を残した。今後ハリウッドでどんどん活躍していくだろうし、この勢いでアカデミー賞も 取ると思われる。そのほか、アニメ部門で受賞した『カールじいさんの空飛ぶ家』も、米批評家たちの間で「今までのピクサーで最高の作品」と評価が高く、こ のままアカデミー賞も受賞するのではないか。


アカデミー賞の前哨戦と言われるゴールデン・グローブ賞。受賞結果が出たあとは、いよいよ(ロス時間)3月7日のアカデミー賞にむけて、戦いがヒートアップされる。今年の勝敗の結果は如何に? (取材・文:こはたあつこ)