シネマトゥデイ より(以下一部抜粋)

ニューヨークで開かれている子ども向けの映画祭、ニューヨーク・インターナショナル・チルドレンズ・フィルム・フェ スティバル(NYICFF)で、昨年日本で大ヒットしたアニメ『サマーウォーズ』のニューヨーク・プレミアが行われ、日本から訪れた細田守監督が登壇し た。同作は、あこがれの先輩に誘われ、片田舎の大家族に仲間入りした天才数学少年が、携帯に届いた謎の数式を数学の問題と勘違いして解いてしまう。実は、 それが世界中の機関をつかさどるインターネット上の仮想世界、OZ(オズ)の暗証番号だったで世界が混乱していく物語。

 映画の試写後、観客から拍手の大喝采を受けた細田監督は、アメリカ人の子どもやアニメファンからの質問に答えた。



 この映画を作ろうと思ったきっかけについて、

「自分が結婚して、奥さんの家族と会ったときに、この映画の発想が生まれました。もちろん、あれほど 大きな家じゃありませんが……(笑)」

と語る細田監督。

ヴァーチャルの世界を作り上げる上で、参考にしたものについては、

「いろいろなデザイナーに参加し ていただいたのですが、僕らの世界にもツィッターやフェイスブック、そういった実際にあるものを参考にして製作したんです。ほかには、グーグルですね。 OZ(オズ)の世界が白いのは、グーグルのトップページが白いからなんですよ。(笑)」

と明かしてくれた。


 アニメーターとして活躍するアメリカ人女性からは、仮想の世界OZ(オズ)に登場するアバター(個人が持つキャラクター)は、何種類ものアバター があるが、どれだけの人たちで描いたのかとい質問が飛び、

「アバターが設定上は、10億人の参加者が自分でデザインしたアバターなので、本当にデザインす るのが大変でした。メインは3人のデザイナーで作って、ほかの沢山いるアバター達は、100人くらいのCGデザイナーに、一人3体ずつぐらいで作っても らったんです。10億人いるように見えますかね?」

とアニメーターらしい観客の着眼点に、細田監督は興味を持っているようだった。


 20歳前後のアメリカ人男性のアニメファンからは、細田監督が以前に監督した『劇場版デジモン・アドベンチャー ぼくらのウォーゲーム』では、できなかったことを、さらにこの映画で探求したのだろうかというマニアックな質問がされ、

「(2つの映画に)類似点はありま すね。あれは、10年前の作品なんですよ。あのときと、今のインターネットの環境が全然違うんですよ。その中で、新しい物語ができるんじゃないかと考えた んです。10年前は、若者の(インターネット)使用者が多かったけれど、今は年配の使用者が結構いますからね。それが違いです」

と答えると同時に細田監督 は、この青年が10年前にも自分の作品を何度も観ていたことに驚いていた様子だった。


 そして、5、6歳くらいのアメリカ人の少女が、この映画の主人公である少年が、なぜいつも鼻血を出しているのと聞くと、細田監督は答えに困った表情で

「彼が頑張っているからかなぁ……」

と笑って答えていたのが印象的だった。


 細田監督は質問を受けるだけではなく、観客にも質問を問いかけたり、アドバイスを送ることで、観客の反応をしっかりつかもうとしていた。当初、 20分予定だったQ&Aが、約50分に延長され、アメリカ人のこの映画に対する関心の高さがうかがえた。同映画祭は、2月27日から3月21日まで行わ れ、ニューヨーク市内にあるカンター・フィルム・センターやシンフォニー・スペースで開催される