Movie Walkerより(以下一部抜粋)


>『JSA』(00)や『オールド・ボーイ』(03)を手掛けたパク・チャヌク監督の最新作『渇き』が2月27日(土)から公開される。来日した監督に本作について話を伺った。


本作は、敬けんな神父がヴァンパイアと化し、愛する女性を見つけるという設定だ。“ヴァンパイアもの”は数あれど、そこはパク・チャヌク監督、作品がもつインパクトが非常に強い。これまでの作品もそうだが、なぜ“強度のある”作品を撮り続けるのだろうか?


監督が言うには、「私の場合、シナリオを書く際に、何らかのテーマを盛り込みます。“シナリオを書く”という行為は理性的で、きちんと文字や観念と して書き表せます。ところが、“映画を観る”という行為は言葉や文字だけではないため、“感じること”も伝えたいのです。ですので、何か触ったような気が する、においを感じたような気がするという錯覚を起こすくらい刺激的なやり方で伝えたいので、そのような作りになります」と、とても穏やかだ。


オープニングを少し過ぎた頃、とあるすごい(というか、えげつない)シーンがある。詳細は避けるが、それは神父が持つ“笛”を伴うシーンで起こることなのだが、どうして思い付いたのか聞いてみた。


「私は転んでもただでは起きない性格なので、一つ何か(この場合は笛)を登場させたら、そこからさまざまなものに派生させたいのです。まず、“神 父”と“愛する女性が住む一家”を音楽的に対比させたいという思いがありました。そして、神父自ら“病院にいる患者のために吹く楽器”としても登場します し、神父が己の性欲を抑えるときの道具としても使っています」と、にこやかに話す。


続けて、「笛は、実は男性の性器に似ているんですよ。今回リコーダーを数十本用意し、一番男性器に似ているものを選びました。笛一つからいろいろな ことを発想させて、ふくらませていきました」と語った。言うまでもなく、これはほんの一部で、このような細かい部分が積み重ねられて映画は作り上げられて いる。


このように、本作は細部まで考えられて制作されている。ありがちな“ヴァンパイア映画”では決してない。『渇き』の完成度は、第62回カンヌ国際映画祭で審査員賞受賞の折り紙付きだ。こんな作品は、映画館で観るにふさわしい。