毎日jp より(以下一部抜粋)

 今年の米アカデミー賞で作品賞など5部門でノミネートされた作品だ。ジョージ・クルーニー演じるリストラ請負人、ライアン・ビンガムの人生におけ る目標は、利用する航空会社のマイレージを1000万マイルに到達させること。そんな彼に、予期せぬ転機が訪れる……。

 最高に面白い。面白いが、それだけでは済ませられない。背後にあるのは、不況によるリストラと、それによって生まれる失業者。ネット社会による弊 害にも触れている。私たちを取り巻く苦々しい現実を盛り込んだ物語は、ほろ苦い人生訓に満ちている。


 年間出張322日のライアンは、他人とのつながりを求めない生き方をこれまでしてきた。マイレージを1000万マイルに到達させることを目標にし てきた彼だが、ライアンと同様、出張で全国を飛び回るデキる女アレックス(ヴェラ・ファーミガさん)と、新入社員ナタリー(アナ・ケンドリックさん)とい う2人の女性との出会いが、“大切なもの”を悟らせることになる。


 だからといって映画は、彼のこれまでの生き方を否定することも肯定することもしない。結論をあえて提示しないことで、逆に、あなたにとっての大切 なものは?と観客に問いかけ、自分の心と向き合わせる。


 クルーニーは、ライアン役でオスカー候補になった。残念ながら受賞しなかったが、優しい笑顔と、時折見せる寂しげな表情が、女性客のハートをつか むことは必至だ。監督・脚本は、たばこ業界の内幕に迫った「サンキュー・スモーキング」や、未成年の妊婦の人間的成長を描いた「JUNO/ジュノ」のジェ イソン・ライトマン監督。これまで社会風刺に富んだ物語を軽妙につづってきた。その語り口は、今作でも十分に生かされている。20日からTOHOシネマズ シャンテ(東京都千代田区)ほか全国で公開。