シネマトゥデイ

>フリーアナウンサーの徳光和夫が「南アフリカ共和国上空にUFO襲 来!」と伝える驚きの臨時ニュースが、テレビやラジオで放送されている。

 切迫した口調でUFO襲来を伝える徳光。映像はヨハネスブルグ上空に飛来した巨大宇宙船、さらにパニックに陥る群集や、エイリアンとのファースト コンタクトに成功した人類を映し出す。あまりのグロテスクさゆえか、はたまた人権保護ならぬエイリアン権保護のためか、モザイク処理が入ったエイリアン尋 問映像も流される。


 ついに現実が映画を超えた瞬間……と言いたいところだが、この臨時ニュースはもちろんニセモノで、本日エイプリルフール用に制作された映画『第9 地区』の宣伝CMだ。「もしも、何百万人もの宇宙人が難民としてやってきたら?」というアイデアを基に誕生した映画『第9地区』は、無名スタッフ・キャス トにもかかわらず、世界中の賞レースをにぎわせ、第82回アカデミー賞では作品賞ほか4部門にノミネートされた。


 エイリアンを移民の隠喩(いんゆ)として描いた点、そしてPOV演出やフェイク・ニュース映像などを絡めてみせる、ときにユーモラスな展開にはこ れまでのSF映画、特に「宇宙人モノ」にはなかった独創性とリアリティーがある。過去にアメリカで「火星人襲来」というラジオドラマを臨時ニュース風に放 送して大パニックに陥ったというエピソードがあるが、今回の徳光による臨時ニュースは、作品の持つパワーを含め、それよりもリアルかもしれない。


映画『第9地区』は4月10日より丸の内ピカデリーほかにて全国公開