韓国の音楽番組を見ると、アーティストの後ろでステージに花を添えるバックダンサーの姿が目立つ。彼らは、アーティストとともにレッスンを重ね、時にはス
テージ構成から振り付け、新人育成までを手掛ける。アーティスト並みに忙しい日程をこなす、K-POP界になくてはならない影の立役者たちだ。しかし彼ら
は「韓国のダンサーは活躍する場が少なく難しい仕事だ」と口を揃える。一見、華やかそうに見える彼らも、韓国のダンス市場を拡大しようと常に努力している
のだ。
韓国でバックダンサーを務めるチームは数多く存在する。BIG
BANGやSE7EN、T-MAXなどを担当する<スターシステム>、コヨーテ、イ・ジョンヒョン、フィソンなどを担当する<フレンズ>、
Rain(ピ)、Wonder
Girlsなどを担当する<JYP>、東方神起やSS501などを担当する<アイディミョ>、イ・ヒョリ、パダなどを担当する<MS>、キム・ゴンモ、
チェヨンなどを担当する<WAWA>がそうだ(※現在の担当歌手と異なる場合があります)。フリーで活動するダンサーも少なくないが、ほとんどがダンス
チームに所属しダンスの基礎を学ぶ。そこからRain(ピ)、ペッカ(コヨーテ)、パク・ガヒ(After
School)のように、歌手として羽ばたいていくダンサーも多く、ある意味“新人の宝庫”とも言える。
また、<JYP>のようにアーティストの所属会社が運営するダンスチームと、<フレンズ>のように個人が運営するダンスチームに大きく分かれる。会社運営
の場合は、主に所属アーティストを担当するのに対し、個人運営の場合は、アーティスト側からの指名で活動を展開するという仕組みだ。
今回インタビューに応じたのは<フレンズ>や<スターシステム>などに所属していたコ・スンヒョン(26)と、<アイディミョ>のリーダー、コ・ユンヨン
(26)、そして、韓国が世界に誇る“B-BOY”として活躍中のキム・ドクヒョン(Ducky/28)の3人。彼らにダンスに対する思いを聞いた。
-ダンサーになったきっかけ
スンヒョン:中学生のときに先輩たちが学校でダンスをしているのを見て、それがカッコよく見えました。その先輩たちを真似しながらダンスをはじめました。
初めはカッコよく見せようという思いでダンスをしていたのですが、そのうちにダンス自体が好きになり現在までダンスをしています。
ユンヨン:幼い頃からダンスが好きでした。特別なきっかけはなく、ただダンスが好きだったんです。本格的にダンスをはじめたのは高校生のときでしたね。
ドクヒョン:家庭環境や勝負欲のためだったかもしれません。幼少期からテコンドーもしていましたので自然と運動神経が良くなりました。8歳、10歳差の兄
と姉がいるのですが、彼らが流行に敏感な思春期になるのと同時に、自然と僕も(同い年の子に比べて早くに)大衆文化に接していたと思います。
-韓国のダンス事情
スンヒョン:韓国はダンサーが活動できる場、チャンスが少ないと思います。
僕は最初、<フレンズ>というチームに入りました。午後3時~10時までひたすら練習を続け、数か月後にステージに立つことができました。僕は背が低いの
で、すごく辛い思いもしました。その分、誰よりも練習し、メインダンサーになることができました。当時は1か月に90本もの仕事をこなすほどでした。しか
し、働いた分の報酬は十分ではありませんでした。お金のためにダンスをしている訳ではありませんが、今でもダンサーたちは報酬を期待することができませ
ん。
僕はほかのダンサーとはちがい、さまざまなジャンルをしています。ヒップホップ、B-BOY、ロッキングです。僕は真のダンスを追及してきました。練習も
いろいろな場所を渡り歩き、B-BOY、ロッキングダンサーたちと交流を続けています。
ユンヨン:韓国はプロとアマチュア(アンダーグラウンド)の世界が大きく分かれています。プロダンサーは主に放送活動(歌手のバックダンサーなど)を行
い、アマチュアダンサーはダンス公演を行います。人数はチームによって異なりますが、5名から20名ほどで構成されています。
練習は基礎からはじめます。僕はこの基礎練習の時期が最も辛かったですね。活動内容もチームごとに異なりますが、僕は現在、歌手の振り付け(テレビで披露
するもの)やレッスンを担当しています。
ドクヒョン:韓国のダンサー人口は徐々に広がっており、すべてのジャンルにおいて生産的なダンサーラインを作っている段階だと思います。
-活動していて大変だったこと&楽しかったこと
ユンヨン:(笑)常に大変ですが、幸せです。「タイムマシーンに乗って、練習がすべて終わっていればいいな」と思うことがよくあります(笑)。辛さと楽し
さを同時に感じていますね。
-自身にとってダンスとは
スンヒョン:人生です。ダンスと今の彼女がいなかったら(笑)、コ・スンヒョンという人間はいなかったと思います。
ユンヨン:人生の半分をダンスとともにしてきました。僕にとってダンスは半生ですね。別の言葉で表すと…“中毒”とでも言いましょうか、辞めることができ
ない存在です。
ドクヒョン:ライフスタイル。長い間ともにしてきた友です。
-活動(担当)してきた歌手とエピソード
スンヒョン:PAPAYA、コヨーテ、フィソン、ピョル、キム・ジョングク、BIG
BANG、Eru、T-MAX、チョ・ソンモ、イ・ジョンヒョンなどたくさんいます。
エピソードは…イ・ジョンヒョンさんのバックダンサーとして<人気歌謡>に出演したときのことです。エンディングでは皆が倒れるかたちで退場するという設
定でした。そこで僕の“イタズラ心”が働いたんでしょうね(笑)、思わず逆立ちをしてしまったんです。すると、衣装のスカートがずれて、僕の下着が全国に
生放送されたということがありました(苦笑)。
ユンヨン:SHINHWA、S.E.S.、東方神起、SS501などです。
エピソードは…東方神起とアジアツアーをまわっていたときのことです。台湾で記録的な台風の中、公演をしたことがありました。野外だったため、オープニン
グ曲が終わった時点で、メンバーやダンサー全員がびしょ濡れになってしまったんですよ。そんな中、ファンの方々は、雨に当たりながら一生懸命に声援を送っ
てくれるんです。すごく力をもらい、最終的には思い出に残る公演になりましたね。ステージを完ぺきに見せることはできませんでしたが、ベストを尽くせたと
いう達成感に包まれました。
ドクヒョン:僕の場合はバックダンサーとしての経験はほとんどありません。あえて言うならば、ソ・テジやチョPDですね。
-日本に紹介したい歌手とその理由
スンヒョン:<UPT(アップタウン)>というヒップホップグループです。韓国ではずば抜けてラップの実力が優れたグループだと思います。
ドクヒョン:ストリートダンサーの<GOGO BROTHERS>が個人的に好きです。そして、TOP NATION JAPN、DJ TEE、DJ
MAR、DJ LIGHT、ALL AREA CREWなどをリスペクトしています。
-今後の目標と夢
スンヒョン:米国に留学し米国市場を体験した後、韓国でもダンサーたちが生活に困らず、まともなダンス人生を送れるように努めたいと思っています。また、
アーティストを作るエージェンシーも立ち上げたいですね。もちろん一生、踊り続けます!
ユンヨン:記憶に残るダンサーになりたいです。ダンスの上手な方々は本当にたくさんいるので、正直、自信はありませんが、努力を惜しまず頑張りたいと思っ
ています。
1番大きな夢は世界のダンサーと同じステージに立つことです。大きすぎますかね(笑)? 叶うかわかりませんが、夢ですので、自分自身を信じて歩んでいき
ます。
ドクヒョン:僕が思うB-boyとは激しい形態のアートフォームであり、僕が追求しようとしているスタイルはモダンクラシックのような感覚です。今後もさ
まざまな経験をしながら、ダンサーたちの文化を1つずつ築いていきたいと思います。
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