「シャッターアイランド」(公式サイト)

上記公式サイトのトップページにも「人間の目が如何に二本の線分の長さを錯覚するか」を実験する図が載ってますが、映画の冒頭でも似たような事を例に挙げて映画の謎解きへのディレクションが示されています。

それらは要するに「人間は見たままではなく、思い込みによって判断する」という事を示唆し、さらにその「思い込み」が間違っている場合が多々あると教えてくれるものです。

ところでそれとは逆に、ただその場を見ているだけなのに何か特定の物ばかり気にかかるようになったり、或いはある人の事を唐突に思い出したりという事もよくあります。そういう場合はサブリミナルというのか、意識にはのぼらない部分でその物や人を連想する特定の何かを見かけているんだと思います。

この「シャッターアイランド」を見ながら、何故か私は「アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン」を思い出していました。それもキムタクやジョッシュの事ではなく、彼らにとっての諸悪の根源となった人物――芸術家気取りの殺人犯――でした。

芸術家気取りであって芸術家ではないのは、そいつに独創性がないからです。映画の中とはいえ、彼が人を殺してその肉体を切り貼りして作ったものは全部フランシス・ベーコンの絵画の剽窃でしたから。それでも2次元を立体におこす才能はあったとは言えますが。

で、「アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン」でその役を演じていた俳優の顔を漠然と思いだしていたら、いきなりその顔が「シャッターアイランド」のスクリーン上にぬっと現れたんですよ。

これにはびっくりしましたね!

この映画見てて一番驚いたのはこのシーンだったかも(その前に驚いたのはマックス・フォン・シドーが出てるのに気づいた時。これは「エクソシスト」かーーーっっ!!)

その俳優さん、イライアス・コティーズ、このブログでは何回か取り上げましたけれど、いろんな役を演じた中でも最上級に凶悪な顔をしての御出演でございました。

いきなりイライアスの顔が出てきた時には肝をつぶしたものですが、よく考えるとちゃんと彼や「アイ・カム~」を思い出すべき理由というのがあったんですね。

その前の方で壁に何枚もの絵が並んでいるシーンがあって、その中にフランシス・ベーコンを彷彿とさせる図柄のものがあったので(人が椅子に拘束されている図)、それで彼の作品をたくさん見た映画である「アイ・カム~」を思い出し、芋づる式にイライアスまで思い出しちゃったわけです。

しかし実際、取り扱っている題材とかイライアスの演じている役柄とか、「アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン」と「シャッターアイランド」に共通する部分はとても多いのですよ。なんとなく、一枚の絵だけではなく映像全体の雰囲気からも「アイ・カム~」のイライアスが浮かび上がってくる感じなのです。これは偶然なのか、それともイライアス・コティーズという俳優の個性がそういう作品にぴったりなものとして呼ばれているのか、どっちなんでしょう?


さて、物語がさらに進む内、レオ君演じるテディは繰り返し悪夢に悩まされるようになります。寝ても覚めても悪夢に悩まされているような状況に、ホラーファンの私としては当然の感想として、まるで「エルム街の悪夢」見てるようだと思ってました。

同じ悪夢なら「エルム街~」でフレディーを通して各監督が見せてくれたホラーな悪夢の方が独創的でもっとおもしろかったわ、なんて罰当たりな事考えながらね。スコセッシの悪夢はそれなりには美しいですが、スタンリー・キューブリックが「シャイニング」で見せてくれたものには及びもつかないです。全体的に恐さも美しさも少々物足りないというか、インパクトに欠けるんですよね(あくまでホラーファンとしての意見です)。

それはおいといて、「シャッターアイランド」の中盤で妙に「エルム街の悪夢」とフレディーの事ばかり思い出されるなあと思ってて、映画が終わってキャストがクレジットされるの見てたらそこに「ジャッキー・アール・ヘイリー」の名前を見つけて思わず「ぶっ!」とか言ってしまいましたよ。なんのこたーない、新「エルム街の悪夢」のフレディーその人が出演してたんですから思い出してて当たり前。ってか、むしろ見た時にそうと気づけ、自分! ですよ、ホント。まさしくホラーファンにあるまじき失態でございます(猛省中)。

言い訳するならジャッキー・アール・ヘイリーのフレディーはまだポスターとトレイラーでしか見てないってことと、その前に彼を見た「ウォッチメン」ではロールシャッハだったから顔があんまり出てないってことですが、でもちゃんとそこでも素顔はさらしてるんですからね。ああ、もう、情けないったら!


こういう、「シャッターアイランド」みたいな映画見ててね、思い出すのがジャック・ニコルソンの「カッコーの巣の上で」じゃなくて「エルム街の悪夢」だったりするのがね、ホラーファンの証拠といえば証拠なんですけどね(←その事は別に情けないとは思ってないらしい)。


それにしても、イライアス・コティーズといいジャッキー・アール・ヘイリーといい、いわゆる「人の心の闇」を体現しているような役がとても上手です。ホラーに限らず、スクリーン上に現れるだけで観客を落ち着かない気分にさせ、恐怖へと気持ちをシフトさせる役目を完璧に果たしてくれてます。

レオ君を真ん中に挟んでこの二人が「危うさ」の側にいるとしたら、「安心」の側にあって観客を落ち着かせてくれるのがマーク・ラファロですね。彼の暖かい笑顔がこの作品の中では本当に救いになってました。

これから「シャッターアイランド」を見る方は、俳優さん達の素晴らしい演技に是非ご注目ください。もちろん女優さん達の演技も見ものですよ♪




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