北野武監督、カンヌでサイン攻め!質問攻め!「オレの映画は失敗の繰り返しなんで」【第63回カンヌ国際映画祭】
第63回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に新作映画『アウトレイジ』(6月12日公開)が選出された北野武監督が現地時間17日、公式記者 会見を行った。北野監督の同映画祭コンペ参加は映画『菊次郎の夏』以来、11年ぶりとなる。また『BROTHER』以来となるヤクザ映画とあって、記者た ちの関心は高く、前日に行われたプレス試写は2回とも満席となった。会見でも北野監督が放った、新感覚のヤクザ映画に関する質問が集中した。まず司会者から久々のヤクザ映画に挑んだことを問われると、「昔はヤクザやバイオレンス映画を撮ってたけど、『そればっかり』と言われるので、違 うのを撮ってたの。そしたら今度は『何でやめたの?』と言われるようになったんで、もう一回撮ろうと。でも、昔に戻ったと言われるのはイヤなんで、今回は セリフも増やし、ストーリーもわかりやすく面白くしたつもり。自分では進化したと思ってる。これで失敗したら、また戻るかもしれないけど。オレの映画は失 敗の繰り返しなんで(苦笑)」と自虐的な発言で笑わせつつ、新作に至るまでの心境を語った。
その『アウトレイジ』はヤクザ組織の血で血を洗う抗争劇ではあるのだが、ヤクザの落とし前の定番だった“指詰め(エンコ詰め)”について劇中で 「指を切るのは一銭にもならねぇよ」と現金を持ってくることを要求されたり、資金源が違法カジノや株と時代を反映した変化が見られる。そこに反応した海外 のヤクザ映画ツウと見られる記者からは「もうヤクザは時代遅れなのか?」という質問も出た。
北野監督が「オレが知ったかぶりして話すのも何だが」と前置きした上で、「ヤクザの組織は今もあるし、収入源が変わっただけ」と説明した。また、 「影響を受けたヤクザ映画は?」と問われると、ヤクザ映画の金字塔と呼ばれる深作欣二監督の『仁義なき戦い』や、海外だとマーティン・スコセッシ監督 『グッドフェローズ』やフランシス・フォード・コッポラ監督『ゴッドファーザー』を「好きだ」と挙げた。ただし「深作さんのカメラを持って振り回したり、 役者で(画面の)スペースを埋めるのも好きじゃない。言うなら、『深作さんの撮り方をしない』と言うのが、影響を受けたことかな」。また、後者の作品にし ても「米国らしい映画だと思うけど、影響と言っても、日本人のオレが同じことをやれるワケがない。自分は育って来た、知っている範囲でしか描けない」と巨 匠たちへのライバル心をのぞかせた。
今回、北野監督にとっては初の最高賞である「パルムドール」の期待がかかるが「映画を作り始めたときなんて黒澤明監督も、カンヌもヴェネチアも映 画祭があるなんて知らなかった。だから、今までだって海外を意識して映画を作ったことはないし、そもそもカンヌを意識しているのなら、こんな酷い暴力映画 は撮りません」と一笑した。