これは「ザ・ロード」の直接の感想ではないのですが、あれを見て陸上の生物を捕る猟も海洋生物を捕る漁も絶やしちゃいけない大切な技術なんだなあとしみじみ思いましたね。

今は確かに様々な技術が発達して、野生動物を狩らなくても食物に困らない生活ができる人間が多くなって、もちろん日本もそうなんですが、だからといって「獲物を捕るための技術」を廃れさせてしまったらダメなんですわ。だってもし現代の先端技術が万が一使えない状況に陥ってしまったとしたら、人間、古来の技術に頼って食物を得るしかないんですからねえ。

「ザ・ロード」では自然そのものが壊滅していたからもはや猟も漁も出る幕はありませんでしたが、しかしその前段階として野生に生き残っていた動物を捕らえて食うという時期があったに相違ないんですよ。その時に「獲物を捕らえる手段」を知っているか、その技術を使いこなせるかというのは生死を分けると思ったんですね。

結局人間飢えたら何でも食うんです。
相手が人だろうが飢えたら狩って食うんですよ。今飽食の時代だから自然保護だのなんだの言ってますけど、飢えたらそんなのどうでもよくなるのは目に見えてます。

「ザ・ロード」は映画の本筋から離れてそういう自然と人間の関わりにまで広く目を向けさせる作品でした。登場人物の動向を追うより、彼らを取り巻く過酷な環境そのものが雄弁に語りかけてくるような。

これは見なければ分かりません。
「ザ・ロード」を見られる人は幸運なんだと思います。

その時に、現代的な銃等の装置が弾切れとかで使えなくなったらですよ、結局身近にある道具を使って獲物を捕るしかないわけでしょう? その時一から始めてたのでは飢えて死にますよ。昔ながらの伝統的な猟や漁の技法って、いざという時のためにもやっぱり伝えるべきなんです。

そういう体を使う技術というのは本とかフィルムとかで読んだり見たりしただけではダメなんですね。ちゃんと師について教わる必要がある。付け焼き刃では結局自分の命を縮めるだけです。その知識と技術はセットにして、人から人に伝えていく必要があるのですよ。伝える人がいなくなれば、その技術も終わりです。過去に確かにすぐれた技術があったという事実しか残りません。ピラミッドのように、どうやってそれを作り上げたのか解明するために長大な時間をかけた調査が必要になるのですよ。

食糧危機って、もうすぐそこまで来てるかもしれないんですよ。
天候は不順で作物の生育に影響を与えているし、口蹄疫で牛や豚はたくさん殺処分されている。足りない食べ物は外国から買えばいいと今は思っているかもしれないけれど、その外国だって自分とこの食べる物がなくなったら日本になんて撃ってくれませんよ。

食文化といいますが、食べる前にその食品を如何にして手に入れるかがまずあるわけです。その文化、技術、技法はなくしちゃいけません。今の科学技術は永遠ではないです。文明はいずれ滅びます。その時に、運悪く生き延びてしまった人類がなんとか飢え死にしないですむように、種の存続のためにも伝統的な狩猟法や漁法は伝えていかなければならないのですよ。

そこには猟場や漁場を後世に伝えるための知恵も含まれているでしょう。野生の獲物を取り尽くさないための知識の蓄積というのもあるはずです。