シ ネマトゥデイより(以下一部抜粋)

> 矢吹丈役に山下智久、そのライバル力石徹役を伊勢谷友介が演じる不朽の名作コミック「あしたのジョー」実写版映画が6月2日にクランクアップを迎えた。 曽利文彦監督に撮影を終えての感想を直撃した。

 撮影は今年の3月下旬に開始され、6月始めに撮影が終了した。最後に撮影したシーンは、逆に物語の冒頭。夜更けの雨の中。チンピラを殴り飛ばしたジョー が警官たちに追われて逃げこんだ路地裏のとあるビルの非常階段の下。野良猫のように、ジョー(山下智久)が軒下にうずくまっているというシーン。

 ご存じの方も多いが映画の撮影は物語の流れで撮られるワケではなく、シーンごとに分けて撮影される。最後に撮ったシーンが最後のシーンになるわけではな いのだが、映画を製作する側にとってクランクアップは印象に残るシーンだけに撮り終えた瞬間についての感想を曽利監督に尋ねると「大変な撮影のわりには楽 しい現場だったのでクランクアップした瞬間は終わってしまうことがとても寂しい気持ちでした」とやはり大困難を極めた撮影のことは頭をよぎったらしい。そ れでも撮影は順調だったらしく、「ボクシングシーンなど、とても困難な撮影が多かったので、予定通り撮り終わったことが奇跡的でした。キャスト、スタッフ のみなさんの努力にひたすら感謝です」とチームワークの良さも明かしてくれた。

 「あしたのジョー」は半世紀にわたり愛され続け、スポーツ界の大物や生き方のバイブルにする人まで熱狂的なファンをかかえている作品だが、曽根監督が物 語を受け止めたとき「すべてを出し切り、何もなくなるまで必死に生きろ!」という強いメッセージが印象的だったという。

 今作では山下智久が演じた矢吹丈という人物は、不良少年でありながらひたむきに人生を生きていく。そんな彼の人間的な魅力を監督は「風のようにひょう ひょうと生きながら、ぶつかると岩のように硬いところ」と表現。山下の醸し出す雰囲気と何となく合致しそうな気がする。

 また、伊勢谷友介演じる力石徹と丈との人間的な葛藤(かっとう)が物語をけん引していくがその違いをどう描いたかについては「静と動。力石が静でジョー が動。でも芯の部分では同じ二人だと思います。それぞれのメッセージやイメージを大切にして、さらにオリジナリティを加えながら演出しました」と表現。メ ンタル的な部分が動きで表現されていることにも期待が持てそうだ。

 撮影は終えたが仕上げはこれから行われる。曽根監督の『ピンポン』や『APPLESEED アップルシード』を観てもわかるように、もともとの素材を躍 動的にそして美しく編集していく手腕は卓越しており、世界的な評価も高い。

 すでに世界観が確立している歴史的な人気作品だが、曽根監督が作り上げてくれる『あしたのジョー』は、この物語を新たな方法で日本の傑作映画として映画 史に刻んでくれそうな予感がする