sanspo.comより(以下一部抜粋)

日本の戦後演劇界に革命的な一時代を築いた劇作家、つかこうへいさんが10日に肺がんのため、千葉県内の病院で死去していたことが11日、分かった。62 歳だった。慶大在学中から学生劇団に加わり、「熱海殺人事件」「蒲田行進曲」などの名作を次々と発表、爆発的ブームを呼んだ。しかし、今年1月に肺がんを 公表。入院して抗がん剤治療を受ける一方、病室から電話で演出指導をするなど、最後まで芝居への執念を見せたが、ついに力尽きた。

 関係者の話を総合すると、つかさんは肺がんのため、千葉・鴨川市の亀田総合病院で抗がん剤治療などを続けてきたが、6月に入って危篤に近い状態と なり、今月10日午前10時55分、家族に看取られながら、同病院で息を引き取った。がん公表から半年。62歳、あまりにも早すぎる死だった。


  遺体は現在、都内の自宅に安置され、故人の遺言により葬儀は密葬で執り行われる。


 新作「新・蒲田行進曲」が8月12日に開幕する直前だけ に、関係者は大きな衝撃を受けた。つかさんは、今年1月25日に肺がんを告白。「飛竜伝2010 ラストプリンセス」の開幕直前で、病床から電話で役者に 演技指導するなど執念を見せていた。


 つかさんの名を有名にしたのは、大部屋俳優の悲哀を描いた82年公開の「蒲田行進曲」。80年に舞台 で初演したものを、つかさん自身が映画向けに脚色し、深作欣二氏が監督。つか門下生の平田満(56)、風間杜夫(61)に、当時のトップ女優、松坂慶子 (57)が加わり、空前の大ヒットを飛ばした。特に平田の階段落ちは国民の涙を誘い、名シーンとして語りぐさに。


 風間、平田をはじめ、つ かさんによって見いだされた俳優は数知れず。厳しくも愛情あふれる演出で徹底的に鍛え上げ、無名だったかとうかずこ(52)、筧利夫(47)をスターに育 て上げた。最近では小西真奈美(31)、黒木メイサ(22)をブレークさせている。


 アイドルを演技派に生まれ変わらせることでも知られ た。NHK朝ドラ「ひらり」で人気女優になった石田ひかり(38)を舞台「飛龍伝94」のヒロインに大抜てき。過激なセリフまわしに体当たり演技で、清純 派を脱皮させた。ほかにも、内田有紀(34)、広末涼子(29)、石原さとみ(23)らつか門下生は、枚挙にいとまがない。


 つかさんが演 劇と関わりを持ったのは、慶大在学中の1970年ごろ。平田、風間は、このときからの仲間。73年には、「熱海殺人事件」で岸田國士戯曲賞を当時最年少の 25歳という若さで受賞。つかさんのシャープで斬新な演出に、劇場は若者であふれかえり、82年の東京・紀伊國屋ホールの「熱海殺人事件」の予約電話に は、空前の13万件が殺到した。


 私生活では、つかさんの舞台「サロメ」に出演した熊谷真実(50)と80年に結婚したが、多忙によるすれ 違いで82年に離婚。翌年、元つかこうへい劇団の女優で14歳年下の生駒直子さんと再婚して世の中を驚かせた。

 最近も病床で新作への情熱 を燃やし続けたつかさん。芝居と人間を愛し続けた革命児の早すぎる死に、演劇界は悲しみに沈んでいる。