シネマトゥデイ より(以下一部抜粋)

> 大ヒットシリーズの最新作『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』のインタビューで、本広克行監督が撮影現場での秘話を明かした。

 本広監督にとって、「踊る大捜査線」は特別な作品だ。

「僕が映画監督をやっていられるのは、『踊る大捜査線』のおかげ。この作品があるから、ほかの映画も撮らせてもらえる。むちゃな企画が通るのも、『踊る』があるからこそなんです」

とシリーズへの思い入れを語る。日本実写映画の動員および興行収入記録を塗り替え、社会的に大ブームを巻き起こした『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』から7年。その年月の間には映画『サマータイムマシン・ブルース』『UDON』『少林少女』など数々の作品を手掛けてきたが、

「誰も評価してくれないんですよ」

と寂しげに言う。「踊る」シリーズがあまりにも記録的なヒットを飛ばしているために、生半可な興行成績では満足できない体になってしまったようだ。

「だから、僕にとって『踊る』は期末テストのようなもの。これで赤点さえ取らなければ、また好きなようにやらせてもらえるので……。映画がヒットするためなら、なんでもやります。『UDON2』のためにも!(笑)」。


 もちろん、「踊る3」の制作にあたっては、入念な準備をした。

「これだけの大きな作品ですし、役者さんも超一流。能力の高い人ばかりなので、僕への要求も大きい。役柄についても『深めすぎ!』と言いたくなるくらいに、キャラクターを作り込んでくるんです」

と、現場のレベルの高さを語る。特に、主役の青島俊作を演じる織田裕二については、

「織田さんは、本当に深い。どうして青島がここにいるのか、というシチュエーションについてまで質問をぶつけてくる。あまりに深く突き詰めるので、だんだん何を話し合っているのかわからなくなっちゃうこともあるくらい」

と真摯(しんし)な姿勢に感嘆する。クランクインの前には織田との特別な打ち合わせ時間を取り、互いに納得いくまで作品について話し合った。

「今回の作品では『生きる』が大きなテーマになっているんですけど、織田さんと『なぜ、生きるのか?』というところまで、熱い討論を交わしました」。

どんな作品でも全力投球の織田だが、青島俊作については殊更に徹底的なのだという。


 本広監督自身も、作品を深めるために新境地を開いている。「踊る大捜査線」といえばコミカルで軽快な演出が特徴だが、本作では

「画面に厚みを持たせることを心掛けました。あえて『重い絵』を撮ったんです。音楽のスケール感もアップしています」。

撮影中に最も感慨深かったのは

「やっぱり、青島がコートを着るシーンですね! あの場面こそ、『これが“踊る”だーっ!』という感じ」。

重要なシーンだけに、撮り方にもこだわった。

「アップで単純にかっこよく撮るのではなく、横に移動しながら……という手法に挑戦したんです。言うなれば、『スーパーマン』ですね」

と、かの有名なスーパーヒーローの変身場面にインスパイアされていたことを明かした。


 前作から7年の時間を積み重ね、作品ごとに新たなものを学んできたという本広監督は、

「これまでの集大成として、今の僕に出せるものを出し切りました!」

と笑顔を見せた。全精力を傾けて本作に取り組んでいたせいなのか、

「実は、編集ラッシュを見ているときに、ぼろぼろ涙がこぼれてきて……。今まで、どの作品でも、一度もこんなことはなかったんですけど」。

少し照れながら話す本広監督からは、謙虚な話しぶりの中にも最高の作品を世に送り出したという自信がうかがえた。


映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』は全国公開中


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