> 「第32回ぴあフィルムフェスティバル前夜祭」が15日、東京・京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターで行われ、若松孝二 監督の「キャラピラー」が先行上映された。上映後には若 松監督をはじめ、同作で第60回ベルリン国際映画祭の最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞した寺島しのぶ 、大西信満 が舞台挨拶に立った。
第2次世界大戦下、 戦争で四肢を失いながら「生ける軍神」として崇められる夫・久蔵(大西)と、その妻シゲ子(寺島)の壮絶な生きざまを通して、戦争の悲惨な現実を突きつけ る。寺島は、若松監督とともにフランスでの上映に立ち会い「上映が終わった後はシーンとしていましたが、観客の皆さんから『こんな勇気ある日本の戦争映画 を見たのは初めてだ』という声を聞いてうれしかった」と述懐。しかし、銀熊賞を手に帰国すると「『また脱いだんですか?』なんて言われてしまい本当に ショックだった。せっかく(海外で)賞賛されたのに……」と悔しそうに話していた。
若松監督は、寺島への出演オファーについて「どうせ やってくれないと思い、ダメ元で本(台本)だけ読んでもらおうと。そうしたら、やるって言ってくれたから驚いた。この時点で映画は70%出来上がったも同 然だった」とニヤリ。予算の関係で現場には15人のスタッフしかおらず、メイク担当者もいない状態だったが「寺島さんが『じゃあ、ノーメイクでいきましょ う』って。寺島さんは皮膚まで芝居ができる人。日本にはほかにいない」と女優魂を絶賛した。
寺島は、「赤目四十八瀧心中未遂 」でも大西と共演しており「正直、赤目でやり尽 くした感もあった」という。それでも、「監督がこのふたりでないと成立しないというし、新たな気持ちで大西くんと向き合いました。結果的に、初対面の俳優 同士ではできない演技ができたと思う」と自信をのぞかせた。大西は四肢だけでなく、言葉も失ったという難役だったが「目の演技といっても限界がある。そこ にある僕の気持ちを翻訳してくれた寺島さんに感謝したい」と話した。
「キャタピラー 」は、8月14日から東京公開。