> 2002年のドキュメンタリー映画『ロスト・イン・ラ・マンチャ』で 描かれたように、『ドンキホーテを殺した男』といえば、テリー・ギリアム監督が長年温めてきた未完の作品だ。今年9月に撮影が開始され、2011年に公開 予定だった同作だが、どうやら撮影開始が延期になったようだ。
イギリスのLSQ TVが、『トイ・ストーリー3』のイギリスプレミアに登場したギリアム監督に、『ドンキホーテを殺した男』の製作に関して質問したところ、予定より遅くな ることを監督自身が明かした。「観客が作品をみるのは、当初、わたしが予定してた時期より少し遅くなるでしょう」とギリアム監督は説明し、忍耐力こそ映画 製作の全てだと悟りをひらいたような表情で語った。
インタビューでも、ギリアム監督は主演スターに関しては言葉を濁していたが、『ドンキホーテを殺した男』の撮影が延期されるのではとうわさされ始 めたのは5月末からで、ジョニー・デップの代わりにトビー・グリソーニを演じることが決まっていたはずのユアン・マクレガーが、MTVのインタビューで、 ギリアム監督と長年一緒に仕事をしたかったと話しながらも、『ドンキホーテを殺した男』の製作が再開されることを望んでいると、出演が確定ではないような 発言をしていた。
また、今月には、主演に決まっていたロバート・デュヴァルが、ビリー・ボブ・ソーントン脚本による、戦後を舞台にした人間ドラマの企画を進めていることがニューヨーク・タイムズ紙により明らかになっており、ロバートの出演も確定していないのではといわれていた。
ギリアム監督の『ドンキホーテを殺した男』は、2000年に製作されたが、大洪水によるセットの被害、主演に決まっていたフランス人俳優ジャン・ ロシュフォールの故障などで撮影が中断され、製作が暗礁に乗り上げていた。その後、脚本の権利の問題や資金難を乗り越えて、2010年に新キャストで製作 が再開されることが決まった。製作再開に際して、ギリアム監督とトニー・グリソーニは脚本を手直しし、ドンキホーテ役にロバート・デュヴァル、ドンキホー テに従者と勘違いされるトビー・グリソーニ役にユアン・マクレガーが予定されていた。
以前から、『ドンキホーテを殺した男』が未完であることについて、映画ファンの間では、「ギリアム監督の不運」や「ドンキホーテの呪い」であると いわれている。過去に、『ドン・キホーテ』を製作しようとした故オーソン・ウェルズも、資金難や度重なる撮影延期で作品を完成することが出来なかった。ギ リアム監督には、ぜひともこの逆境に打ち勝ち、長年の夢である『ドンキホーテを殺した男』を完成させてほしいものだ。