産経新聞 より(以下一部抜粋)

> 作家、村上春樹さん(61)のロングインタビューが季刊誌「考える人」(新潮社)の夏号に掲載され、話題となっている。村上さんは普段はあまりメディア に登場しないことで知られるが、記事は約70ページにものぼる異例の長さ。累計約380万部のベストセラー小説「1Q84」(BOOK1~3)について触 れたほか、執筆スタイル、日常のことなど約30年間の作家生活を振り返る内容だ。インタビュアーを務めた当時の編集長、松家仁之(まさし)さん(51)に よると、「村上さんのインタビューで、こんなに長いものはなかったのでは」という。(堀晃和)

 インタビューは5月、神奈川県箱根町のホテルで、2泊3日計約12時間にわたって行われた。

 多くのファンが注目するのは、「1Q84」の続編の可能性に言及した部分だろう。同作は昨年、BOOK1と2が同時に出版され、2巻で完結と思われた が、今年春にBOOK3が刊行された経緯がある。村上さんは「BOOK4なりBOOK0なりがあるかどうかは、いまは僕には何とも言えない」とした上で、 「あの前にも物語はあるし、あのあとにも物語があるということです」と語っている。「続篇を書く可能性はまったくないとは言えない」とも。ファンには、う れしい発言だ。

 一千万部を超すベストセラー「ノルウェイの森」についても興味深い感想を述べている。青年の目線で書かれた一人称の小説だが、映画になったものを試写で 見て、「実は女の人が中心になっている話だったんだ」と気づいたという。映画は9月のベネチア国際映画祭に出品され、12月に公開される予定だ。

 創作の姿勢に触れた発言も多くある。「分析的な描写や心理的な描写がもともとあまり好きじゃない」。このため「会話の中にできるだけ描写を織り込んでい く」のだという。「地の文では説明のかわりになるべくメタファーを用いて、パラフレーズを構造的に積み重ね、描写すべきものごとの多くを別の何かに預けて しまう」。つまり暗喩(あんゆ)を使い、他の言葉への置き換え(パラフレーズ)をしていくこと。これを自身の文体の特徴の一つと分析している。松家さんは 「ものを書くことの根幹に触れている。小説を書きたいと思う人にはすごいヒントになるはず」と話す。

 インタビューの内容は、少年期からの海外文学体験や私生活のことまで、とても幅広い。料理を日常的にすること、レコードだけで1万枚近く持っていること…。村上さんの人間像が浮かびあがってくる。

 小説を書いていないときは「そのへんにいるただの人です」と、村上さんは語っている。30年近く付き合いがある松家さんも「緊張を強いるようなことは一切しない。まじめだけどユーモアのセンスもあって…。尊敬すべき兄貴分的な人です」と話している。