>無人島に女1人、男23人の“逆ハーレム”のサバイバル生活を描く衝撃作『東京島』(8月28日公開)に出演している窪塚洋介を直撃。常に俳優としてだけではなく、スタッフ側の目線をも併せ持つ窪塚。全身全霊で役作りをする孤高の姿勢には、思わずうならされる。
本作は、太平洋戦争中に起きたアナハタン事件をモチーフに、桐野夏生が手掛けた同名小説の映画化作品だ。夫と共に無人島へ漂流し、たくましくサバイ バルしていく紅一点の主人公・清子役に木村多江。窪塚は、清子に罵声を浴びせる風変わりな若者・ワタナベ役に扮する。最初に脚本を読んだ段階で、彼は少し 物足りなさを感じたと言う。
「原作はもっとグロいんですが、脚本を読んだらライトになっていて正直ちょっとつまらなくて。最初にプロデューサーと監督とお会いした時、ぶっちゃ けて思っていたことを全部話しました。それで、男を犯そうとするところ、亀の甲羅を背負うところ、紙を食うところはぜひやりたいと提案したんです。自分が “変態パート”をやることで、ちょっとでも原作のエログロなテイストに寄れたらいいなと思いました」。
実際に彼の意見は作品に取り入れられた。中でも、彼自身が提案した、木村了扮する犬吉を襲おうとする野獣のような目つきが印象的だ。「勝手に俺が惑っているだけなんですが、ちょっとでもグロくなるようにと、かなりもがきました」。
現場では、率先して若い助監督や共演者たちを駆り立てたようだ。「とある事情があって若い助監督達には『もっと声を出した方がいい』って言いまし た。声って船を漕ぐ力と同じだから、出せば出すほどスピードが上がるし、一体感が出てくる。そういうことも功を奏してか次の日から少しずつ変わっていっ て、最後はとてもいい現場になりました。どんどん成長していったんですね」。
彼はそんな自分の仕事のやり方について「面倒くさい役者ですから。でも、そうあるべきだと思っています」とキッパリ語る。「俺の中では、いい作品が 撮れるのがいい現場。みんなが仲悪かろうが、死ぬほど息詰まろうが、いい作品ができたらそれでいい。集中できる緊張感っていいもので、向かい風になるんで すよ。いい現場ではすごい向かい風が吹いているから、すごく高く飛べる。それをひとりでやるんじゃなくて、みんなで共有したいんです」。
監督的な目線も持っている窪塚だが、映画監督をしたいとは思わないのか。「PVの監督はやっていますが、たとえば数年後に映画を撮らせてもらえる環 境が来たとしても撮らないです。そんな甘いもんじゃないし、感覚だけでやるのはまだ怖いです。技術的、精神的なことを知らないで映画を撮ったら、ただの笑 い者になるだけだから」。これは、自分自身を冷静に俯瞰で見ているからこそできる謙虚な発言だ。
では、彼にとってここ数年の目標は? 「近い内に映画と、今自分がやっている音楽を両方一緒にしたような作品をやってみたい。ドキュメンタリーみた いな感じから始まり、オチが壮大なところにいってもいい、現実感との狭間をなくしたような作品もいいですね。エミネムの『8 Mile』(02)と『大日本人』(07)を足したような作品かな(笑)」。