> ■主役はヤマト…共演でき幸せ

 アニメ史に残る名作「宇宙戦艦ヤマト」を実写化した「SPACE BATTLESHIP ヤマト」が12月1日から公開される。主役の古代進を演じたSMAPの木村拓哉(38)は「主役は自分ではなく、もちろんヤマト。共演できて、本当に幸せです」と話す。(岡本耕治)

 木村がヤマトに出会ったのは5歳のときだ。

 「昭和53年、劇場版アニメの第2作『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』を映画館で見た。ものすごい衝撃を受けた作品です」

 ファンの思い入れもきわめて強いヤマト。出演の打診を受けた木村は「気後れというか、窃盗団がとんでもない獲物をねらってる気分。『そこまでやっちゃうのか?』みたいな。数日悩みました」と語る。結局、古代を演じたい気持ちが上回り、出演を決めた。

 艦橋に沖田艦長(山崎努)がいる。そして島大介(緒形直人)、真田技師長(柳葉敏郎)、森雪(黒木メイサ)。目の前に現れたヤマトの世界に、木村の胸は高鳴った。

 「特に『今、ヤマトを演じているんだなあ』と実感したのは、沖田艦長にヤマト式の敬礼(右腕を胸に当てる)をしたとき。初共演の緒形さんとも、すぐに仲良くなった。“島”という登場人物が緒方さんを紹介してくれたような、不思議な感覚があった」

 監督は「リターナー」「ALWAYS 三丁目の夕日」を手がけた山崎貴(たかし)(46)。CG(コンピューター・グラフィックス)を駆使して、リアリティーいっぱいのイメージを築き上げる天才だ。

 ある日、ヤマトの最強兵器「波動砲」発射シーンの撮影が行われた。ファンなら誰もが注目する場面だ。

 「ターゲットスコープ、オープン」「電影クロスゲージ、明度20!」。迫り来る敵を前に、かつて木村を含む子供たちの血を騒がせた波動砲発射の手順が、忠実に再現される。そして、いよいよ発射!

 「僕が引き金を引いたのに、監督が『カット』を言わない。あれ?と思ったら、しばらくして、監督席の方から『どぎゅううううん!』って音が聞こえてきた。山崎監督が興奮して、波動砲の発射音を叫んでいたんですよ」

 みんなの思いを結集し、波動砲発射シーンは、迫力満点の描写となった。

 近年、日本では宇宙を舞台にしたSF映画はほとんど作られていない。しかし、本作の宇宙での戦闘場面の描写は評価も高く、SF邦画は変わるのでは、という期待もふくらむ。

 「もし今回、ある壁を突破できたのなら、それは偉大なオリジナルがあったからこそ。この先、いろいろなアイデアが形になったら面白いですね」