> いよいよ本格的な正月映画シーズンが到来し、洋画では映画『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』『トロン:レガシー』といったハリウッド大作がヒットを記録し、邦画では映画『SPACE BATTLESHIP ヤマト』『GANTZ』など有名作品の実写化映画が大きな話題を集めている。特に『SPACE BATTLESHIP ヤマト』は現在、興収50億円超えを見込める勢いで、日本映画の底力を証明すべく“航行”を続けている。邦画が洋画の興行収入を超える今だからこそ、つい 見過ごしてしまいがちな日本映画の魅力を再確認したい。
その魅力の一つにまず挙げられるのが、日本映画ならではの人間描写だ。派手なストーリー展開で観客を引き付けるハリウッド大作とは対照的に、日々 の生活から生まれる感情や機微を控えめに、しかし丁寧に描く手法は、観客にノスタルジーや共感を呼び起こす。今年、第60回ベルリン国際映画祭でクロージ ング上映され、山田洋次監督に特別功労賞が贈られた現代劇『おとうと』には、どこか懐かしい家族の姿を通して、失われつつあるきずなの尊さが描かれてい る。また、山崎豊子のベストセラー小説を映画化した『沈まぬ太陽』では、高度経済成長を支えた「仕事人間」の苦闘と挫折がダイナミックに描かれ、その気迫 に満ちた姿は多くの現代人を圧倒した。
こうした日本的な美学を見つめ直すトレンドの延長として、2010年、時代劇映画ブームが巻き起こったことは記憶に新しい。映画『必死剣 鳥刺し』『十三人の刺客』『最後の忠臣蔵』『桜田門外の変』『武士の家計簿』などバラエティー豊かな時代劇が次々公開され、東宝、東映、ワーナーなど業界 5社が「サムライ・シネマ」と銘打った共同キャンペーンを展開したことも話題になった。先行きが不透明なこの時代、日本人が原点に立ち返ろうとした結果と いえるかもしれない。
また、映画『真夏のオリオン』のように「生きて祖国に帰る」ことをテーマに、過去の戦争映画とは異なるアプローチで戦争を見つめ直す作品も作られ るようになった。旬の俳優・松山ケンイチを起用し、伝説的忍者コミックを映画化した映画『カムイ外伝』もリアルなアクションと大胆なVFX映像で、日本人 のDNAに刻まれた力強さを思い出させた。この年末年始は、日本映画に触れることで、自分の中の日本人らしさを再発見し、新年を迎えてみてはいかがだろう か。
『おとうと』は1月2日よる8:00よりWOWOWにて放送