> 大みそか恒例のNHK紅白歌合戦は、大河ドラマ「龍馬伝」に主演した福山雅治の“断髪”ライブなど、インパクトの大きいイベントが盛り込まれた白組の勢 いが止まらなかった。スペシャルゲストながら、食道がんの療養で休養中だった桑田佳祐の復活劇も白組の優位に寄与しただろう。白組はこれで紅白6連覇で 33勝目。紅組は28勝で、差が広がった。

 「歌で つなごう」のコンセプトの下、出場者の歌をじっくり聴かせる「原点回帰」を打ち出していた今年の紅白。

 井上啓輔チーフプロデューサーが「平成21年の60回のメモリアルを経て、61回目の今回は新しい時代の紅白を目指す」と話していたように、プリキュア や怪物くんなど、子供たちに人気のキャラクターをステージ上に登場させた「キャラクター紅白歌合戦」や、司会の嵐のメンバーが事前に神奈川県の宮大工や京 都府の茶農家などを訪問、日本のふるさとの良さを体験し感じた思いを歌に込めステージで披露するなど、楽曲にプラスした多面的な企画で視聴者を楽しませ た。

 また、今年(23年)は日米開戦70年の年。沖縄県出身のHYのボーカル、仲宗根泉が、先の戦争を経験した祖母の話をもとにつくった曲「時をこえ」と、 白い折り鶴を衣装の襟元にあしらったクミコが「原爆の子の像」を題材にした「INORI~祈り~」の2曲は、ともにメッセージを込めた圧倒的な歌唱力で聴 衆を引き込んだ。

 記者たちは紅白のステージ裏を取材で走り回っているが、この2曲が流れた時間は、報道陣も足を止めてテレビ放送に見入っていたのが印象的だった。

 紅白史上最多の12シーンに登場したAKB48は、舞台同様、楽屋裏でも移動に全力疾走していた。お疲れさまと声をかけたい気分だが、演出的に今回は“AKB頼り”が過ぎたのではないかという疑問の声が報道陣や関係者の中にあったことも付け加えておきたい。

 連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」のヒロイン、松下奈緒が司会をした紅組は残念ながら負けた。しかし、「ゲゲゲ」ファミリーが集結して主題歌「ありがと う」とともに名場面を走馬燈のように見せた演出は、「ゲゲゲ」ファンにとっては年の瀬のうれしいプレゼントになったのではないだろうか。

 さて、これらの結果が、視聴率にどのように反映されるのか、結果が楽しみだ。