シネマトゥデイ

 名匠、宮崎駿監督によるスタジオジブリの傑作アニメーション『紅の豚』が、作品の舞台であるイタリア国内にて昨年の11月に劇場公開され、好調な記録を残した。

 本作は、1920年代のイタリアを舞台に、呪いを受けて豚になった元空軍の凄腕パイロット、ポルコ・ロッソを主人公に、彼を取り巻く友人たちや、荒くれものぞろいの飛行艇乗りたちを、美しいアドリア海の姿と共に描いた作品。今も根強いファンを持ち、宮崎監督自身も、映画批評・インタビュー雑誌「Cut」9月号のインタビューで「『ポルコ・ロッソ 最後の出撃』かなんかをフッて作れたら、幸せなんですけどね。それはもう道楽ですから」というほどお気に入りの作品だ。

 それほど素晴らしく、イタリアの美しい情景を見事に切り取った本作が、物語の舞台となった国で上映されていなかったのが驚きだが、スタジオジブリの海外事業部によると、単純に昨年までは、本作のイタリア国内での配給権を取得する会社がなかったのが理由とのこと。

 そんなおり、2010年に「日本」をメインテーマとして行なわれたローマ映画祭の回顧上映として『紅の豚』を含むジブリ作品が上映されたこと。また、それまでにイタリア国内で上映された『崖の上のポニョ』や『となりのトトロ』によって、子どもたちを中心として国内でのジブリ作品の認知度も高くなっていたことから、この2作品を配給したイタリアの配給会社Lucky Redが『紅の豚』の権利を取得したのだという。

さらに、海外で作品を展開する場合、作品が映画館で上映されることなく、そのままDVDスルーとなってしまうことが多々ある中、Lucky Red社は本作を、49館と小規模ではあるが、劇場のスクリーンで上映することを決定。日本公開から18年を経て、昨年の11月12日から、ようやく作品の舞台となった国で上映されたのだという。

 結果として、Box Office Mojoによると『紅の豚』のイタリア国内での収益は32万1,823ドル(2,735万4,955円)となっており、良好な成績を残した。10年以上前の作品が国外で劇場公開され、好調な成績を残したことは、ジブリの海外事業部としても驚きだったという。

 長い年月をかけて、舞台となった場所での上映を果たした映画『紅の豚』。ときがたっても、まったく色あせない本作の魅力を証明した、イタリア上映となったようだ。


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