> 俳優・竹野内豊(40)がこのほどサイパン島を訪れ、「中部太平洋戦没者」の碑の前で主演映画「太平洋の奇跡‐フォックスと呼ばれた男‐」(11日公 開)の完成を報告した。太平洋戦争の激戦地・サイパンで米軍を相手に誇り高く戦った実在の日本人を描いた物語。太平洋戦争を語り継ぐべく全国9カ所で行っ たキャンペーンで、参加者から受け取った折り鶴1万1000羽を慰霊碑に捧げ「これからも平和への思いを伝え続けていきたい」と誓った。
  ◇  ◇
 サイパン島北部、多くの日本兵が飛び降り自ら命を絶ったスーサイドクリフの真下に建立された「中部太平洋戦没者の碑」。竹野内は静かに手を合わせた。「安らかに眠ってください。日本から鶴を持ってまいりました」‐。
 完成披露試写会を兼ねて全国9カ所で開催した勉強会「太平洋戦争を伝えるキャンペーン」に同行し、一般参加者とともに戦争と向き合ってきた。最終ゴール となるサイパンまでの総移動距離は1万5000キロ。全国の会場で参加者が平和の祈りを込めた1万1000羽の折り鶴を、共演の山田孝之(27)、平山秀 幸監督(60)とともに慰霊碑に捧げた。

 米軍から“フォックス”と呼ばれ、恐れられた大場大尉を演じるにあたり「生半可な気持ちではできない」と覚悟した。クランクイン前の昨年4月には、サイ パンを訪れ、現地の人も入らないというジャングル奥深くまで足を踏み入れた。「何もかも、当時のまま残っていた。10人ぐらいしか入らない洞窟に、30人 ぐらいがいた痕跡とか…。食料もなくカタツムリを食べていたようで、殻が一面に残っていた」。日本軍の兵器、飯ごうなども散乱。歴史は止まったままだっ た。

 昨年5月から2カ月間にわたりタイで行われたロケ。竹野内はたった1日しか日本に帰らず、撮影に集中した。

 完成した作品を携えて再びサイパンの地を踏んだ竹野内は、改めて激戦の地やバンザイクリフにも足を運んだ。「“戦争”という言葉だけで、理解したつもり になってはいけない。自分もこの作品で疑似体験して、本当の苦しさを知った。平和への思い、サイパンでの事実。そして大場大尉の生き様を通じた日本人とし ての誇り。これからも伝えていく」と語った。