俳優の竹野内豊(40)がこのほど、主演映画「太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男」(平山秀幸監督、11日公開)の舞台となったサイパンを訪問。昨年12月からスタートした国内キャンペーンで折られた、1万1000羽の折り鶴を戦地にささげた。プレミア上映会では現地の絶賛を受け、「この島で起こった戦争の事実を、映画を通じて伝えることができたと思う」と手応えを得ていた。

 昨年4月、クランクイン前に訪問して以来、約9か月ぶりのサイパン。手にした折り鶴の重みを感じながら、竹野内は万感の思いに浸った。

 山田孝之(27)、平山監督とともに、米兵の上陸地点や島内に今も残っている戦争の傷跡を見て回った。前回の訪問時に足を運んでいた場所もあったが、当時よりも心に迫るものが大きかったという。

 「疑似体験とまでいえるかは分からないけれど、撮影を通じて、多少なりとも当時を体験することができた。その上で改めて、戦争というものを伝え続けていかなければと感じました」。日本兵たちが投身自殺したとされる「スーサイドクリフ」の下に作られた「中部太平洋慰霊碑」に“鎮魂の鶴”を手向け、静かに手を合わせた。

 昨年12月22日、沖縄・糸満市の沖縄平和祈念公園からスタートした「太平洋戦争を伝えるキャンペーン」。先月27日の名古屋まで全国9か所で行われたイベントに集まった観客の手によって折られた鶴は、全部で8000羽。それに加え、竹野内演じる主人公・大場栄大尉の親族や、キャンペーンを知って全国各地から配給する東宝に寄せられたものも含め、全部で1万1000羽になった。

 竹野内は「鶴を折ってくださった全員の気持ちを持ってくることができて、本当に良かった。(亡くなった兵士たちも)きっと喜んでくださっているんじゃないかと思います」。約1万5000キロに及ぶキャンペーンを駆け抜け、戦争の真実を多くの人に伝えられたことを誇りに感じているようだった。