産経新聞 より(以下一部抜粋)

【素顔の「江」5】


 徳川2代将軍、秀忠の正室、江(ごう)の生涯を描く大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」。2月6日は、第5回「本能寺の変」が放送。織田信長(豊川悦司) の傲慢さが理解できず「二度と会わない」と宣言した江(上野樹里)だったが、信長の本心を知り、再び、京で会う手はずとなった。一方で、信長に領地を取り 上げられ、羽柴秀吉(岸谷五朗)の配下で毛利攻めに加わわれと命じられた信長の家臣、明智光秀(市村正親)の決起の時が近づく…。

【写真をみる】「本能寺の変」のシーンを演じる豊川悦司

 今回は、序盤のクライマックス、「本能寺の変」のシーン撮影にかける現場スタッフのこだわりなどをお届けする。

 ■ど真ん中に直球投げた緊張感を味わって

 「本能寺の変」の撮影は、昨年末、計2日間で行われた。演出の伊勢田雅也氏によると、本能寺のおもてで信長軍と明智軍が戦うシーンに1日、信長が覚悟を決め本能寺の奥に入っていく道中や、最期のシーンで1日撮影、という具合だったという。

 「本能寺の変」をテーマにした撮影は、時代劇の演出家にとっては特別なものだという。伊勢田氏も「戦国ドラマの見せ場で、いつかはやってみたいと思って いて、ようやくかなった。『本能寺の変』を撮影して、やっと、大河の演出家になったんだなという思いでいます」と感慨深げに話す。

 大河の歴史の中では、「これまで10回近く『本能寺の変』を撮影している」(NHK広報)といい、その全ての現場に立ち会ってきたスタッフもいるとか。

 「このシーンは、過去の大河との比較をどうしてもされがちです。かかわったスタッフも『何か新しいことを』と考えるのですが、やりつくされていることもあり、今回は逆の発想で、『変わったことをしなくても、いいものを作れないか』という気持ちで臨みました」(伊勢田氏)

 信長が鉄砲を打ち放したり、大きな火炎を上げたりといった視覚的な変化球は控えめで、信長の人間性を淡々と描く演出方針が決定。それがよかったのか、仕上がりを見た前出の「本能寺」ベテランスタッフは、「非常にまっとう」「正攻法の本能寺」という印象をもったという。

 「ど真ん中に直球を投げた緊張感を、視聴者の方には味わってほしい」と伊勢田氏。信長の光秀への呼びかけや、長く信長に付き従った森蘭丸(瀬戸康史)との別れ、そして、「思うままにまっすぐ生きよ」とメッセージを託した江との交流の“結末”の描き方に注目だ。

 信長の死を知った江の叫びが第5回の終盤に盛り込まれるが、その撮影時にはこんなエピソードが。

 「ゴウちゃん(伊勢田氏はヒロインをこう呼ぶ)は静かに泣いたほうがいいのかなと思ったんですが、上野さんは『号泣したい』と。『撮影が始まって、まだ (自分自身の)殻を抜けきれていない、このシーンで号泣することによって、江になれそうな気がする』と言われ、なるほどと思い、最初の方針を変えました」