Movie Walkerより(以下一部抜粋)
>『エレクション』(05)、『エグザイル 絆』(06)のジョニー・トー監督の最新作『MAD探偵 7人の容疑者』(公開中)は、一筋縄ではいかない犯罪映画だ。これまでマフィアや警察に属する男たちの熾烈な闘いを、独自の美学を持って描いてきたトー監 督だが、本作は、異能のプロファイラー対7つの人格を持つ多重人格殺人鬼という斬新な設定の異色作となった。しかも設定だけではなく、演出法も結末もかな り奇抜で、既にハリウッドリメイクが決定したのもうなずける。
【写真をもっと見る】銃口を突きつけ合う3人。衝撃の展開に息を飲む
主人公は、他人の隠された人格を見抜けるという特殊な能力の持ち主・バン。彼はその能力ゆえに、常識を逸脱した奇行に出て、警察の職を追われてしまう。そ んな彼の元へ、彼の後輩だったホー刑事がやって来て、暗礁に乗り上げた刑事失踪事件についての意見を求める。当時、事件現場に居合わせたコウ刑事の供述録 画映像を見て何かを感じ取ったバンは、ホー刑事と共に、コウ刑事をマークする。やがてバンは、コウ刑事が7人の人格を持つシリアルキラーだということを見 抜く。
まず、多重人格者の描き方が興味深い。実際に、バンの目に映るビジュアルとして、コウの隠された7人の人格を、それぞれ7人の俳優が演じている。特に、バ ラエティーに飛んだ男女7人が、同時に通りをかっ歩するシーンはインパクト大。また、バンの別れた妻も、彼を思う幻の妻と、刑事を務める現実の妻の両方が 登場する。バンと、彼にしか見えない幻の妻、ホー刑事、彼の恋人の4人で会食をするシーンは、まるで実態のない死者を切なく描く『シックス・セン ス』(99)を思わせる。
終始、予断を許さない展開の本作では、最初に「?」と感じた謎が少しずつ明かされていく過程が見る者の好奇心をかき立てる。しかも、クライマックスにはダ メ押しの一撃が用意され、見終わった後、あ然とさせられる。これがまた、予定調和の犯罪映画ではありえない結末なのだ。さすがは、ジョニー・トー。常に観 客をしびれさせてきた、フィルム・ノワールの名手の技だ。見終わってからもう一度物語をなぞりたくなる本作は、リピーター効果も絶大だろう。
もちろん、彼の盟友で、トー監督の前作『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』(09)でのタッグも記憶に新しいワイ・カーウァイの力も大きい。本作では、監 督、脚本でクレジットされているが、まさに鬼に金棒の名コンビである。ちなみに、脚本は、香港で実際に起こった「チョイ・ポーコウ事件」にヒントを得たも のだが、リアリティを追求した内容にはうならされる。
本作のリメイクに名乗りを上げたのは、『ラッシュ・アワー』シリーズのプロデューサー、アーサー・サルキシアン。彼は、同じくトー監督の『ミッション 非情の掟』(99)のリメイク権も獲得しているのだから、目の付け所が素晴らしい。リメイク作品が、オリジナルのクオリティーを超えられるかは難しいとこ ろだと思うが、いずれにしてもジョニー・トー監督の名が世界に轟くのは、ファンとしても嬉しい限りだ。
んっ? 赤塚不二夫? あれ、浅野忠信じゃないの?
>『エレクション』(05)、『エグザイル 絆』(06)のジョニー・トー監督の最新作『MAD探偵 7人の容疑者』(公開中)は、一筋縄ではいかない犯罪映画だ。これまでマフィアや警察に属する男たちの熾烈な闘いを、独自の美学を持って描いてきたトー監 督だが、本作は、異能のプロファイラー対7つの人格を持つ多重人格殺人鬼という斬新な設定の異色作となった。しかも設定だけではなく、演出法も結末もかな り奇抜で、既にハリウッドリメイクが決定したのもうなずける。
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主人公は、他人の隠された人格を見抜けるという特殊な能力の持ち主・バン。彼はその能力ゆえに、常識を逸脱した奇行に出て、警察の職を追われてしまう。そ んな彼の元へ、彼の後輩だったホー刑事がやって来て、暗礁に乗り上げた刑事失踪事件についての意見を求める。当時、事件現場に居合わせたコウ刑事の供述録 画映像を見て何かを感じ取ったバンは、ホー刑事と共に、コウ刑事をマークする。やがてバンは、コウ刑事が7人の人格を持つシリアルキラーだということを見 抜く。
まず、多重人格者の描き方が興味深い。実際に、バンの目に映るビジュアルとして、コウの隠された7人の人格を、それぞれ7人の俳優が演じている。特に、バ ラエティーに飛んだ男女7人が、同時に通りをかっ歩するシーンはインパクト大。また、バンの別れた妻も、彼を思う幻の妻と、刑事を務める現実の妻の両方が 登場する。バンと、彼にしか見えない幻の妻、ホー刑事、彼の恋人の4人で会食をするシーンは、まるで実態のない死者を切なく描く『シックス・セン ス』(99)を思わせる。
終始、予断を許さない展開の本作では、最初に「?」と感じた謎が少しずつ明かされていく過程が見る者の好奇心をかき立てる。しかも、クライマックスにはダ メ押しの一撃が用意され、見終わった後、あ然とさせられる。これがまた、予定調和の犯罪映画ではありえない結末なのだ。さすがは、ジョニー・トー。常に観 客をしびれさせてきた、フィルム・ノワールの名手の技だ。見終わってからもう一度物語をなぞりたくなる本作は、リピーター効果も絶大だろう。
もちろん、彼の盟友で、トー監督の前作『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』(09)でのタッグも記憶に新しいワイ・カーウァイの力も大きい。本作では、監 督、脚本でクレジットされているが、まさに鬼に金棒の名コンビである。ちなみに、脚本は、香港で実際に起こった「チョイ・ポーコウ事件」にヒントを得たも のだが、リアリティを追求した内容にはうならされる。
本作のリメイクに名乗りを上げたのは、『ラッシュ・アワー』シリーズのプロデューサー、アーサー・サルキシアン。彼は、同じくトー監督の『ミッション 非情の掟』(99)のリメイク権も獲得しているのだから、目の付け所が素晴らしい。リメイク作品が、オリジナルのクオリティーを超えられるかは難しいとこ ろだと思うが、いずれにしてもジョニー・トー監督の名が世界に轟くのは、ファンとしても嬉しい限りだ。
んっ? 赤塚不二夫? あれ、浅野忠信じゃないの?