東京都や福島県の浄水場の水道水から乳児向けの飲用基準を上回る放射性ヨウ素が検出された。市民には不安が広がるが、専門家は「注意は必要だが、大騒ぎする必要はない」と、落ち着いた対応を求めている。

 都内で検出した放射性ヨウ素は1キロ当たり210ベクレル。原子力安全委員会の指標に基づく国の暫定規制値同300ベクレルには及ばないが、乳児向けの同100ベクレルは上回った。「飲んでも被害はまずない。大騒ぎは不要」と強調するのは藤田保健衛生大の横山須美准教授(放射線学)。原爆被爆者の統計などから、放射線で明確な健康障害が出るのは100ミリシーベルト以上の放射線を一気か累積で浴びたときとされる。

 国の規制値300ベクレルの水を1リットル摂取時の被ばく量は約0.0066ミリシーベルト相当。100ミリシーベルトに達するには約1万5000リットル飲むことになる計算だ。横山准教授は「1日2リットルでも年間で問題量の20分の1。まず問題ないレベルだ」と話す。甲状腺にたまり、甲状腺がんを引き起こすとされる放射性ヨウ素は、子供の方が大人の3倍以上リスクが高いというが、同准教授は「そもそも規制値は安全に相当余裕を持たせた数値。今後の汚染具合には注意すべきだが、子供も授乳する母親もまだ神経質になるほどではない」と話す。

 近畿大学原子力研究所の杉浦紳之教授は今回計測した数値について「降雨で一時的に濃度が高まったのではないか」と推測。同教授も「いずれにせよ、規制値は1年間摂取し続けた場合でも、対策の検討を始めるべきだという段階の値。すぐに健康被害が出る量ではない」と指摘する。

 乳児の入浴についても、飲まない限り全く問題はないとした。煮沸は無意味で、ろ過は一定の効果があるかもしれないが「むしろ気にしないのが一番」と話した。