> 忘れたころに…♪チャランチャランとNHKの緊急地震速報を告げるチャイム音が流れると、ドキリとする。あの音には、ちょっとしたヒミツがあるのをご存じだろうか。

 「出だしは軽快なチャイムのようだが、“語尾”は危険が迫っているような不協和音に転じる。小さい音声でも高い音が耳に残る。プロが聞いてもなかなか計算された音だと思う」

 そう話すのは、バンド経験のあるレコード会社のJ-POP担当者。

 このチャイム音が放送で使われるようになったのは、2007年10月1日から。運用開始に先立って、東京大学先端科学技術研究センターの伊福部達教授(当時)の監修の下で、NHKとNHK放送技術研究所などが制作したという。

 制作上で決め手となったのは、「危険を知らせ、すぐに避難するよう促す音で▽既に存在する各種の警報音と似ていないこと▽耳の不自由な方にも聞き取れる こと」(NHK広報局)という条件をクリアできるか。いくつかのサンプル音を作成し、さまざまな年齢・性別の人たちに聞いてもらった結果、現在の音に絞り 込まれたという。

 ところで、ゴジラ世代なら伊福部さんという名前にピンと来たのでは? そう、開発に携わった伊福部教授は、あの作曲家、伊福部昭氏の甥にあたる。昭氏は、映画ゴジラシリーズをはじめ、民族主義的な力強さにあふれた数々の管弦楽曲で知られる。

 「チャイム音が、『ゴジラ』の影響を受けている、というネットの書き込みがありましたが、正確には、伊福部昭の交響曲『シンフォニア・タプカーラ』の一節を参考にしたそうです」(音響工学の専門家)

 怪獣映画「ゴジラ」は、1954年のビキニ島の核実験によって起きた第五福竜丸事件をきっかけに製作。ゴジラは核に対する“人間の恐怖の象徴”として生まれた。

 東日本大震災と福島第1原発事故の関係を思うと、不思議な因縁を感じずにはいられない。