MovieWalker

>――一作につきあなたご自身の撮影期間は7週間だと聞きましたが、一番最後のシーンはどの場面だったのですか?

「確か大広間で300人もの大勢の子供たちに向かって話しかけているというシーンだったと思う。それが私にとってのラストシーンだった」


――ラストシーンを撮り終えた後、どのようなお気持ちでしたか?

「その日はデイヴィッド・シューリス(リーマス・ルーピン役)のラストシーンの撮影もあったから、我々ふたりにとっての最終日となった。人生において大きな瞬間が訪れるという場合はいつでも人はその体が無意識のうちにその準備をするものだ。これがラストシーンだとなると、それを肌で感じる。撮影が終わり、『今の映像を確認せよ』の声を聞いた瞬間、それ以降、二度とこの役を演じることがないという思いでいっぱいになった。ただ、人生においてそのような瞬間というのは他にもたくさんあるだろう。人生の中で大きな変化が訪れる時はそれを察知するものだ」


――過去10年間、スネイプを演じてこられて、特別な思い入れはありましたか?

「この役を演じることができて、私はとても光栄だ。彼は周りにいる誰ともなじまないキャラクターで、スネイプとはそういう人だった。10年間ずっと衣装も同じだった。他の誰もが違う制服だったり、シーンによって違う洋服や帽子を身につけていたりするのに、彼の場合は最初から最後までいつも同じだった(笑)」


――誰ともなじまないタイプだと仰いましたが、衣装の面からも彼の人となりがうかがえます。そのような性質というのに共感できる部分はあるのでしょうか?

「いや、彼は実際の私とは全く違うね。だからこそ、この役を演じるのが楽しかったんだ。実際の自分とも私の人生とも全く違うから、全く違うキャラクターになりきるという楽しみがある。とにかく大事だったのは衣装だった。どのようなものにすべきかというのを模索し、決めていかなければならなかったね。細かいこと、例えば袖の仕立てをしている時に、普通のジャケットの袖がくる位置ではなく、手首がしっかり隠れるほどの長めの袖丈にするべきだと言ったんだ。そのふたつを比べると全く印象が違うものだ。手首の辺りにしっかりと巻き付くような長さにし、手を全部見せないようにするというのは重要だった。全てが閉じ込められたという感じを表現するためだ。それからたくさんボタンがついていなければならない」


――そのように衣装にも自分の意見を反映させたりされるのですか?

「それが重要であると思ったらね。演じる役が洋服など構わないタイプであれば何でも着るが、そのキャラクターが着ているもので定義づけられなければならない場合、この場合はそうだが、そういう時は大事だと思う。J・K・ローリングの表現の中に、彼のマントはまるでコウモリのようだというのがある。それから25個ものボタンを一つずつかけていくような人というのは、それだけでその人がどういう人物であるか想像できるだろう。しかも、とても小さなボタンをね。彼は自分自身を閉じ込めているんだ」


――『ハリー・ポッター』シリーズは世界中で成功し、シリーズを通してその人気が衰えるところを知らない大ヒット作となりましたが、その最大の理由は何だと思われますか?

「ストーリーを語ってもらいたいというのは人間の基本的なニーズの一つではないかな。誰かに『昔々あるところに』というふうにストーリーを聞かせてもらいたいという根本的な欲求があるわけだ。J・K・ローリングは卓越したストーリーテラーだから、次に何が起こるのか知りたい欲求に常に駆られるというわけだ。そして3人の子供たち、先生たち、光と闇の存在など、興味をそそられるキャラクターたちのコラージュのようなものと言えるだろう。それから魔法の世界だから何が起こってもおかしくないといった設定ということもある。指を鳴らすだけであるものがみるみるその形を変えていくことできる。子供はもちろん、大人もこの全く別世界に惹き付けられるということが要因だろうね。このような現象は決して最近始まったというものではなく、昔からずっとそうだったわけで、ストーリーを聞かされ、己の想像力を使うというのは普遍の行為だね」


――あなたはもちろんベテラン俳優でいらっしゃいますが、ご自身のキャリアの中ではどのような位置づけなのでしょうか?

「演じるキャラクターの中で、どれが重要でどれがそれほど重要ではないかということではなく、キャリアというのは演じていく多くのキャラクターによって構成されていると思いたいが、この役はその中の一つであることは間違いない。キャリア上、実践的なレベルでいうと、この役を演じるというのがわかっていると、それ以外の時にそれほど期間が長くないがゆえにリスクがそれほどない舞台の仕事をすることができるということがある。ある仕事をした後に必ずハリー・ポッターの仕事に戻っていかなければならないので、バランスはうまくとっていかなければならない。そういう意味では人生においてストラクチャーをしっかり持って臨むことができるというのが、最も大きな利点だね。他のどの仕事とも同様に重要な役だ。それからまた役者にとっては、失敗した役というのは、成功した役と同じくらい重要なものだ。だからこそ、ある役が別の役よりもより重要だという言い方はしたくはないものだよ」


――この役はより注目される役ではありますね

「それなりのプレッシャーはあるが、それによって自分のあるべき姿は何であるかについて学ぶことになり、それこそが私がこれからも忘れることのない貴重な経験だったと思う。ダン、ルパート、エマの3人だったというのがどれだけラッキーなことだったのかということだ。12歳から20歳の間にはどんなことが起こったとしても不思議はないからね。今でも3人の若者は人間としても私も親しくしているが、それだけでなく人前でもしっかりとした態度で接しているというのは奇跡に近いものがあるね」


――シリーズを支えてきた最大の功労者はファンだと思います。彼らの熱意はすごいですね

「ファンが熱意を持っているのは、ストーリーと呼ばれるものに対してだ。素晴らしいことだと思うよ。世界がよりテクノロジーなどに動かされるようになり、おかしくなっていく中、本というとてもシンプルなものによって多くの人々が一致団結するというのは素晴らしいことだよ」


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