ハリウッド版新生『ゴジラ』の監督に大抜擢!世界で絶賛された低予算モンスター映画監督が語る!
シネマトゥデイより(以下一部抜粋)>低予算で製作されながらも、その圧倒的なクオリティーの高さから、クエンティン・タランティーノやピーター・ジャクソンをはじめ、各国に熱狂的なファンを生んだSFパニック映画『モンスターズ/地球外生命体』で注目を集め、新生『ゴジラ』の監督に大抜てきされた新鋭ギャレス・エドワーズ監督が、低予算の中工夫を重ねた本作の裏側について語った。
映画『モンスターズ/地球外生命体』場面写真
映画『モンスターズ/地球外生命体』は、宇宙から飛来した怪物によって汚染されたメキシコを舞台に、進入禁止区域を通ってアメリカに帰ろうとする男女のサバイバルを描いた作品。総製作費は、たった1万5,000ドル(約120万円)とうわさされているが、監督は「実際の製作費はスタッフの渡航費、ギャラ、ホテル、また編集、音楽など撮影後の費用を含めると20万ドル(約1,600万円)ぐらい」とそれを否定。ポストプロダクションや上映用のフィルム変換費も合わせると、さらに倍くらいの経費が掛かっているという。(1ドル・80円計算)
それでも、何千万ドルもの資金が動くハリウッド映画の基準からすると、驚くほどの低予算。しかし本作は、下手な大作映画を圧倒するクオリティーを持った、良質のSF作品となっている。その理由を「映す被写体にこだわらなかったからだ」という監督。「場所を移動して、話に絡められそうな場所や人をどんどん撮影していく、『数撃ちゃ当たる』手法を取ったんだ」とその秘密を明かした。また予算を抑えるため、250シーンを超えるVFX処理は、ほとんど自宅のパソコンでこなしたのだという。
そのため本作には、モンスターが登場する場面はほとんどない。このことはむしろ、画面の出来事を、まるで本当の出来事のように観客に想像させる結果をもたらした。監督も「この映画の一番大切な『登場人物』は俳優でもなくモンスターでもなく観客。そのためには、観客自身が想像力を働かせて映画に参加できる環境を作ることが必要だった」とその成果に満足しているようだ。
さらに注目したいのは、本作で展開される人間ドラマ。スクート・マクネイリーとホイットニー・エイブル演じる男女の絡みは、何げない会話ひとつも、とても自然で、意識することなく映画の世界に引き込まれる。実は本作には脚本がなかった。「すべては俳優である彼ら自身が決めて良いことにして、すべてセリフもアドリブ、撮影隊はそれを追うというスタイル」を取ったのだという。それにより俳優の自然な演技が引き出された。これは、予算を抑えるため、ほとんどの出演者を現地の素人から調達したことにも関係していて、「よりリアルなリアクションを彼ら(素人)から引き出すには、何が起こるのかは全く説明せず、彼らがしたいようにしてもらうのが、一番効果的」だったのだという。
本作をきっかけに、日本で生まれた伝説的怪獣映画『ゴジラ』の監督に指名されたエドワーズ監督。現在脚本を書いている最中ということで、多くはコメントしなかったが、「『モンスターズ』とは違った作品になると思う」と一言。「それでも、一体何が起こっているのかという事を常に気にせずにはいられないような、現実感のある世界観を作ろうと考えているよ」と展望を語った。さらに監督は、「日本で起こった悲劇を言葉でどう表現していいのか」と日本を襲った震災、そして原発事故に関して言葉を失いながらも「このような災害は映画の中だけで十分。日々の生活の中で実際には起きないことを祈るばかりだよ」と続けた。
数々の工夫を重ね、さらに合成作業のほぼすべてを自宅で行い、大作映画を凌駕(りょうが)するほどの作品をものにしたエドワーズ監督。今後「10万ドルの映画と1億ドルの映画の違いはどんどんなくなって行くと思うね」と語り「子どもたちが、自分の部屋で恐竜や宇宙船をパソコン上で作ることができて、観客がその違いを知る事は不可能な次元にまでたどり着いている」と現代の映像制作の変化に言及。「初監督として、そのような時代に映画を作れたのはとてもエキサイティングな経験だったよ」と新たな時代に向け喜びを語った。
映画『モンスターズ/地球外生命体』は7月23日よりシアターN渋谷ほか全国公開