> 本家の円谷プロとタイに住む愛弟子の間で争われていたウルトラマンの海外利用権をめぐる裁判闘争に終止符が打たれる見込みが出てきた。日本、タイなどを 舞台に実に14年間も国際裁判が続いていたが、ここにきて当事者のタイ人が過去、がっぽり“和解金”をせしめていたという事実が発覚、一気に決着へと動き 出したのだ。

 ウルトラマンの海外利用権を巡り、タイ人の実業家、ソンポート・センゲンチャイ氏(71)ら関係者と、日本の円谷プロ側との間で繰り広げられていた訴訟バトル。

 発端は1960年代に日本の東宝撮影所に留学し、ウルトラマンの生みの親である故・円谷英二氏と親交を深めたソンポート氏が、タイに帰国後、ウルトラマ ンが猿神ハヌマーンと共演する映画を発表。「円谷プロ社長からウルトラマンシリーズの海外利用権を譲渡される契約を交わした」と主張し、95年に契約書を 公表したことに始まる。

 ドル箱の海外市場をソンポート氏に持っていかれた円谷プロは「真っ赤な偽物」として提訴し、97年から法廷バトルに発展。日本の最高裁は2004年、「契約書は本物」と判断し、ソンポート氏の勝訴が確定した。

 勢いに乗ったソンポート氏側は「円谷プロがウルトラマンを海外で商品化したのは違法」として逆に円谷プロを東京地裁に訴え、昨年9月、同地裁は円谷プロに約1636万円の支払いを命じる判決を下した。

 だが、ここにきて事態は急転する。知財高裁での控訴審で、円谷プロの大株主であるバンダイ(東京)がソンポート氏との間の「密約」を暴露。「すでに1億円を支払っているので損害賠償は発生しない」と主張したのだ。

 密約とは、1998年にソンポート氏の経営するチャイヨー社とバンダイの間で結ばれたもので、「チャイヨー社は1億円の対価として、バンダイグループが ウルトラマン関連商品を海外展開することに一切文句を言わない」という内容。飯村敏明裁判長は「いかなる権利も行使しないとしたことは明らか」として、ソ ンポート氏側の訴えを退けた。

 ソンポート氏から権利を引き継いだユーエム社(東京)の関係者は「1億円を受け取ったことは認めるが、判決内容に不服がある」とコメントし、同社は最高裁に上告する方針でいるが、新たな証拠が出てこない限り、逆転判決の道は険しい。

 モメにモメていたウルトラマン騒動も収束する日が近くなってきた。