今年、100本目の出演作『1911』の公開を控えるアジアが誇る大スター、ジャッキー・チェンが長い間第一線で活躍できている秘けつを、彼の映画を語る上で欠かせないキーワードから検証してみた。
ジャッキー・チェン最新作『1911』写真ギャラリー
ジャッキー・チェンをアジア・ナンバーワンスターと言わしめる第1のキーワード、それは「カンフー」を置いてほかにないだろう。1973年、ブルース・リーの映画でスタントを務めたことからスタートし、映画『ドラゴン怒りの鉄拳』の正式な続編『レッド・ドラゴン』(ジャッキー・チェン/新・怒りの鉄拳)に大抜てきされたジャッキー。そのスピード感から「ブルース・リーの後継者」と呼ばれながらも、早い時期にジャッキーは独自のスタイルを確立することに。1976年にはカンフー映画の重鎮ジミー・ウォングと共演した映画『ファイナルドラゴン』(キラードラゴン流星拳)で、ブレイク前ながらクライマックスではのちのジャッキーを思わせるアクロバティックな立ち回りを披露。そして今年公開の映画『新少林寺/SHAOLIN』では、道具を使うジャッキー流カンフーが見どころの一つとなっている。ジャッキーの唯一無二のカンフー・アクションは、伝統芸の域に達しているといっても過言ではないだろう。
ジャッキーが愛される理由、それがジャッキー映画の二つめのキーワードの「ユーモア」だ。映画『キャノンボール』『ラッシュアワー』といったコメディー・シリーズで、ハリウッドの不動のスターとなったジャッキー。それ以前にジャッキーが日本で知られることとなったのが、映画『ドランク・モンキー/酔拳』のようなコミカルなカンフー・アクションだったことも誰もが知るところだ。ダメダメな青年が修行を積んで強さを身に付けるのは、ジャッキー映画お決まりのパターンではある。しかし、コサック・ダンスのようなアクションが組み込まれる映画『スネーキーモンキー/蛇拳』や武術書を見ながら戦う映画『カンニング・モンキー/天中拳』などのように、アクションと笑いのバランスや豊富なギャグで観る者を飽きさせず楽しませることができるのは、ジャッキーのエンターテイナーとしてのすごさだ。
伝説としてたびたび語られる「ノースタント」が、ジャッキー映画の三つめのキーワード。スタントを立てずに自らアクションをこなすことで有名なジャッキーだが、何度も命の危機にさらされている。映画『サンダーアーム/龍兄虎弟』では木から木へ飛び移る際に落下し、頭がい骨を骨折。ジャッキーの数あるアクションの中でも一世一代のスタントとなった映画『プロジェクトA』での時計台からの落下シーンでも、首の骨を折る重傷を負っている。危険な目に遭ってもスタントをやめないこと。それが、ジャッキーが活躍を続け、かつ誰もをあっと驚かせることにもつながっている。
昨年はハリウッド進出30周年、今年は出演作品100本目と、節目を迎えたジャッキーだが、最近では映画『新宿インシデント』『ベスト・キッド』などで見せる一面、「演技派」が新たなキーワードに加えられようとしている。アクション映画でのジャッキーの活躍が見たいというのがファンの本音だが、まずは記念すべき100本目『1911』のジャッキーを堪能するとしよう。(岩永めぐみ)
映画『プロジェクトA』は10月17日(月)よる9:00よりWOWOWシネマにて放送。