産経新聞


>その日、ロンドンの音楽の殿堂ロイヤル・アルバート・ホールが、19世紀のパリ・オペラ座になった。10月1、2の両日、ミュージカル「オペラ座の怪人」上演25周年を祝う記念公演。物語に欠かせぬ巨大シャンデリアや、華麗な舞台額縁がわずか3公演のために設置され、200人以上の出演者が、この世界最大のヒット作を上演した。公演の模様は日本でも映画で公開されるが、一足先に紙面でリポートする。

 音楽の才能に恵まれながらも醜い顔を持つ怪人と、美しいコーラスガールの悲恋、アンドリュー・ロイド=ウェバー(63)の音楽…と「オペラ座-」の魅力は尽きないが、特に目を引くのが豪華な装置。無数のろうそくがせり上がるオペラ座の地下や、劇中劇のオペラセットなど、今回の記念公演でどう再現するかが注目された。そこは「キャッツ」「レ・ミゼラブル」も手がけた名プロデューサー、キャメロン・マッキントッシュ(64)の手腕。冒頭のオークションの場面、競売にかけられた2万個のクリスタルガラスの輝くシャンデリアが、花火をまき散らしながら姿を現すと、客席がどよめく。5千人の観客は、一気に19世紀パリにさらわれてしまった。

 さらに舞台中央に巨大オーロラビジョンを設置し、本公演と遜色なく装置を画像でリアルに再現。怪人役ラミン・カリムルー(33)の圧倒的声量、ヒロインのクリスティーヌ役のシエラ・ボーゲス(29)の気持ちのいい高音が、舞台バルコニー上のフルオーケストラに彩られ、円形劇場に響き渡る。ソロ場面では、4階席すみずみまで埋まった観客全員が楽しめるよう、アップ画像を映す工夫も見られた。

 圧巻は2幕の仮面舞踏会のシーン。カラフルな衣装で仮装した約100人が、舞台からあふれんばかりに踊り合唱する姿は、この記念公演にふさわしい、究極の贅沢(ぜいたく)を味わった気分だ。さらにカーテンコールでロンドン初演時のヒロイン役サラ・ブライトマン(51)がロイド=ウェバーの紹介で登場すると、客席の興奮は頂点に。主題歌「ファントム・オブ・ジ・オペラ」を各国怪人俳優らと歌い上げ、劇場が揺れるような拍手が湧き起こった。

 ロイド=ウェバーは記念公演直前、「この作品を誇りに思う。世界中からこれほど熱い反応を得られたのは驚くべきこと」と25周年を迎えた感慨を語った。数あるヒット作の中で、「オペラ座」だけは「初演から一度も手を加えてない」という。その完成度の高さは、世界の観客こそが知っているのではないか。

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 ■世界最大のヒット作 映画や続編ミュージカルも

 「オペラ座の怪人」の原作は仏作家ガストン・ルルーが1910年に発表した小説。パリ・オペラ座地下に暮らす怪人と、歌姫の愛憎の物語はホラーとして扱われたが、ロイド=ウェバーが初めてラブストーリーとして作品化した。現在、ロンドンで上演は25年目、米ブロードウェーでも23年目9000回超と最長ロングラン記録を更新している。

 世界27カ国145都市、6万5000回超の公演の総入場者数は1億3000万人超と、世界で最も愛されたミュージカルだ。

 2004年にはロイド=ウェバー自身の制作で映画化。2010年には続編ミュージカル「Love Never Dies(愛はとこしえに)」がロンドンで開幕したが、こちらは今年8月に閉幕した。

【プロフィル】アンドリュー・ロイド=ウェバー

 作曲家。1948年、ロンドン出身。両親とも音楽家で幼少期から楽器に親しみ、ミュージカル「南太平洋」を見て12歳で作曲を始める。オックスフォード大、王立音楽大に学び、23歳で作詞家、ティム・ライスと組んだ「ジーザス・クライスト・スーパースター」(71年)が大成功した。さらに「エビータ」(78年)、「キャッツ」(81年)、「スターライト・エクスプレス」(84年)とヒット作を連発。尽きることない才能は「現代のモーツァルト」と呼ばれる。トニー賞7回、世界文化賞(95年)など受賞歴多数。

【ガイド】

 「オペラ座の怪人」のロンドン25周年記念公演の様子は、21日からTOHOシネマズ・スカラ座など全国で順次上映される。

 日本でも10月1日から東京・汐留の電通四季劇場「海」で、4年半ぶりの東京公演が開幕。同作は日本で劇団四季が昭和63年に初演し、国内9都市で総公演数5565回(16日現在)、観客動員数は560万人にも及ぶ。今回は怪人を1500回以上演じた高井治のほか、オペラ歌手の大山大輔が新ファントムとしてデビューしたのも話題だ。

 問い合わせは四季予約センターフリーダイアル0120・489444。


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