日刊ゲンダイ より(以下一部抜粋)
>「さすがTBSの開局60周年記念ドラマ。制作者の熱意が画面を通して伝わってきました」
こういうのは辛口で鳴らすドラマ見巧者の作家、麻生千晶氏である。
今月16日からスタートした木村拓哉(38)主演の大作ドラマ「南極大陸」。初回視聴率は22.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。今期のドラマでは最高の数字を叩き出し、キムタク神話健在を印象付けた。
物語は昭和30年代の日本が舞台。敗戦国の汚名返上をかけて南極観測に挑んだ男たちと樺太犬の絆を描いていて、南極観測が「国際社会復帰の一大プロジェクト」へと発展した経緯が熱く展開されていく。木村の役は東大理学部助教授で第1次南極観測隊隊員の倉持岳志。
「とにかく大金をかけて制作したことが画面のいたるところから伝わってくる。第1話のラストシーンで宗谷が岸を離れて南極へ向かうシーンはエキストラだけでも100人以上が起用されていましたし、CGもよくできています。主演の木村についていえば、38歳という年相応の貫禄が出ていて好演。船上のスピーチも堂々としていてよかったです」(麻生氏)
もっとも度を越した物量作戦に視聴者の興味が散漫になる恐れがあるという。
「TBSはちょっと“お膳立て”が過ぎるのでは。共演者にはトップ女優の綾瀬はるかや、香川照之、堺雅人らを起用し、人気子役の芦田愛菜まで配している。『華麗なる一族』も彷彿とさせるし、過去にヒットした作品の“いいとこ取り”の印象です。音楽もドラマ『JIN―仁―』の時と見せ場の“あおり方”が似ているなと思ったら、同じ担当者。おまけに主題歌は中島みゆき。南極観測隊という、それ自体が重厚なドラマなのに、いろんな要素を詰め込みすぎるとピントがボケ、核になる人間ドラマが希薄にならないか。せっかく大金をかけて作るなら、もっと冒険してほしかったですね」(麻生氏)
実際はボロ船だった南極観測船「宗谷」とは対照的に、TBSの完璧なお膳立ての下、満艦飾で船出した木村丸。南極に着く前にコケたら目も当てられない。
(日刊ゲンダイ2011年10月18日掲載)