オリコン より(以下一部抜粋)


>松山ケンイチが主演する来年のNHK大河ドラマ『平清盛』の全体的なコンセプトが「たくましき平安」に決定した。清盛を中心とする平安時代末期の人々の生き様を“たくましく”リアルに描くうえで、キャストの扮装は重要なポイント。その鍵を握るのは、「人物デザイン監修」を務める柘植伊佐夫氏だ。福山雅治主演の『龍馬伝』に続き監修を務める柘植氏はどんなアプローチで平安を描くのか? 同氏の狙いとこだわりから、ドラマの全体像が浮かび上がった。

【写真】平家は赤が“キーカラー”に 父・忠盛演じる中井貴一の衣装にも注目

 今年8月にクランクインし、徐々にビジュアルが解禁されつつある『平清盛』。武士として初めて日本の覇者になったヒーロー・清盛の生涯は、のちに平家滅亡と鎌倉幕府を開く源頼朝(岡田将生)視点で幕開けする。

 物語のコンセプトについて、磯智明チーフプロデューサーはその狙いを明かす。「平安といえば、みやびなイメージ。ただ、当時の武士のありかたを考えれば、平安時代末期の人間は、よりたくましく生きようとしていたのではないかと思う。平安のみやびとたくましさをうまくハイブリッドして見せていきたい」。

 “みやびさ”と“たくましさ”。この相反するような世界観を表現できる人材として、映画『十三人の刺客』の人物デザインをはじめ、映画『おくりびと』『ヤッターマン』などのビジュアルも担当した柘植氏に白羽の矢が立った。『龍馬伝』では大河ドラマで初めて導入された「人物デザイン監修」を任され、衣装やかつら、メイク、小道具などを統括。香川照之演じる岩崎弥太郎の貧困時代の“汚し演出”などで、注目を集めた。

 江戸から平安時代に“タイムスリップ”した柘植氏は、まず時代の壁にぶつかったという。「時代考証のレクチャーを受けたり、史実を読んだりしていますが、突っ込めば突っ込むほど難しい世界。未知の世界で勉強が必要でした。時代考証と新しい表現の整合性において、平安期は幕末と比べると、比較できないほど誓約がありますね」。

 それでも、高いハードルに喜びも感じているようで、発する言葉は力強く、時に笑みを浮かべ、「あらゆる階級の人が入り乱れる世界観で、個性が尊重され、たくましい平安が生まれたら」と熱弁。さらに、コンセプトを踏まえ「生き生きとした群像劇を作れるのかなと徐々に思ってきた」と手応えもにじませている。

 柘植氏の扮装に対するこだわりは細部に及ぶ。「“汚し演出”は『龍馬伝』から引き続きやります。(埃に見せるため)コーンスターチも使ってやってる。ただ、今回は二極化を狙います。王家や貴族に関しては色彩を全面に出して、色彩と汚しが二律する。高位の世界ではあらゆる色彩を使い、“反射感”を意識します」。扮装における生地の素材選びなどに試行錯誤は尽きないというが、階級の差別化を一目でわかる手法を取り入れると明かし、平家の華やかさをより際立たせるようだ。

 また、平家と源氏の区別化にも着手。大みそか恒例の紅白歌合戦を筆頭とする“紅白”のルーツとも言われている「源平合戦」(源氏が白旗、平家が赤旗を掲げて戦った)を引き合いに「紅白は意識してます」。さらには「平家の赤は、一種の記号性として分量を増やしている。赤というのは、今回のドラマにおいてはキーカラーですね。松山くんも『弓の色を赤くしたら?』と言って、赤くしたこともありましたね」。

 ほかにも頭にかぶる鳥帽子や松山が手に持つ青龍刀など、一つひとつに目を向けても思いは溢れる。そして、こんな遊び心も。「清盛と仲間たちには、投網をアクセサリーのように身に付けさせた。白河法皇が殺生を禁ずるということで、漁が禁止されるという抵抗感の象徴や、友情関係を視覚面で共通項としました」。

 福山“龍馬”が首から下げた木札の裏側に「希望の“希”」を彫ったというエピソードも紹介した柘植氏。時にはキャスト以上に人物の心情を考え、趣向を凝らす“柘植マジック”は今回も見所になりそうだ。大河ドラマ『平清盛』は1月8日(日)午後8時より放送(初回は73分の拡大版)。

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