福島県飯舘村を訪問したヴィム・ヴェンダース監督「最後の訪問ではなく、第一回目の訪問」
Movie Walker より(以下一部抜粋)
>2012年度アカデミー賞外国語映画賞のドイツ代表作品『Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(2012年2月25日公開)。本作のメガホンを取ったヴィム・ヴェンダース監督が本作の公開を前に来日し、10月27日(木)に被災地・福島県を訪問した。
【写真】計画的避難区域であり無人となった福島県飯舘村にたたずむ監督
東日本大震災後、すぐに福島フォーラムのホームページに「日本を襲った困難に対して、これ以上ないほど打ちのめされています。なす術もなくテレビを見ながら、自分には何ができるのだろうかと自問しています。映画には癒す力があるはずです! そちらに行って、映画を上映し、地域の皆さんと語りあおうと思います」とコメントを寄せていた監督。「来日をするなら、必ず東北エリアに行き、『Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』を上映したい」と言い続けていたが、今回、遂にその願いが叶えられ、約束を果たすために福島県を訪れることになった。
監督は福島フォーラムでの本作無料上映の前に、今は計画的避難区域であり、無人となった福島県飯舘村を訪れた。実際に避難している民家や、設置されていたガイガーカウンターが記す放射能の数値を見たヴェンダース監督は、景色はこんなに美しく変わらないのに、変わってしまった現実に大変ショックを受けていた。夕日が沈む時間、飯舘村のたんぼを前にたたずむ監督は、「目の前にあったのは美しい景色、香り。本当に美しい新鮮な空気でした。アヒルの声も遠くから聞こえてきて。私の感覚、五感は、ここは天国のような場所であると言っていました」と話すも、ガイガーカウンターが記す放射能の数値に、「私は映画作家であるのに、初めて自分の目が信じられないと思った。私の五感が知らせていることを信じるのだけれど、それが違っていたとすると、どうしたら良いのか。絶対に二度とこのようなことがあってはいけないと、世界に知らせる責任がみんなにある」と熱い思いを語った
その後、福島フォーラムでの舞台挨拶では、心境を語ると共に、「私はどうしたら皆さんの助けになりますか?」という問いかけをした。「放射能の問題、そして家族が一緒に住めない状況。ロードムービーのように行き先を決められないまま、さまよっている状態」と話す観客は涙を流し、監督と抱き合った。監督は福島フォーラムの外で観客と触れ合い、「私はどんなことでも手助けをしたいと思っています。皆さんとの友情をここで築けたと思います。これは友情の第一歩です。今回の訪問は最後の訪問ではなく、第一回目の訪問です。これからも是非受け入れてください」とメッセージを残し、福島の訪問を終えた。