Movie Walker より(以下一部抜粋)


>当初は“夢のエネルギー”として期待され、1950年代から核の平和利用の目的で使用されてきた原子力。だが、福島第一原発の事故を受け、エネルギー政策について改めて考え直す必要にさらされている。そんな中、ドイツの原子力発電関連施設を取材したドキュメンタリー『アンダー・コントロール』が11月12日(土)より公開される。“見学・体験型ドキュメンタリー”と謳われる同作は、ナレーションをほとんど使わずに、淡々と原発関連施設とその内部の日常を映し出す異色の作品だ。

【写真】反対運動で運転中止された原発が、遊園地として再利用されている驚愕の風景

原子炉建屋の内部はもちろん、無数の精密機器が並ぶ操作室をはじめ、放射性廃棄物の貯蔵施設や、廃墟と化した原発の解体作業の様子まで、本作に収められているのは、メディアでは目にする機会の少ない映像ばかり。通常では撮影困難な場所も許可をとりつけ、危険を冒しながら3年の歳月をかけて取材しているだけに、資料としても貴重なドキュメンタリーとなっている。

だが、あまりにも淡々とした映像のためか、作中に映し出される施設は、奇妙に現実感を欠いていて不気味ですらある。現代の大聖堂とも称される原発施設だが、人間がコントロールしきれないほど巨大な力を宿した施設の様子からは、まさに大聖堂を前にしたような、ある種の崇高さと畏怖の念を覚えてしまうだろう。

現実をそのままに切り取った客観的な映像によって、原発の本質をあぶり出すことに成功している本作。推進派・反対派を超え、未曾有の原発事故に直面する国の一員として、この作品から多くのことを感じ取ることができるはずだ。