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>医師免許を持ちながら2003年に“お笑い映画”での世界制覇を夢見て渡米、映画監督に転身したスパイシーマック(福岡県北九州市出身の日本人)のオリジナル脚本・監督作品『史上最高のパンツ一丁男』が、12月16日発売のDVDで日本初上陸する。日本人プロデューサーのジャック・ワイズマンJr.と組み、1万2000ドルという超低予算で2008年にハリウッドで製作された正真正銘のインディーズ系“ハリウッド映画”。米国の俳優100人以上のキャストを動員し、通りすがりの日本人セレブ役で女優・裕木奈江もカメオ出演する爆笑コメディだ。

セクシーなお姉さんも登場

 異種格闘技の違法試合で逮捕されたジャックら4人は釈放の条件としてロサンゼルス市警の誘拐訓練の犯人役として奉仕することに。しかし、誤って一般人を拉致監禁してしまい、人質解放の条件として別に見たくもないアメリカ大統領にストリップダンスを要求するというストーリー。15章のチャプターから構成され、それぞれがほぼ独立したお笑いショートコントでありながら、すべてのエピソードがリンクして、90分の長編映画として楽しめる。

 事件解決の鍵を握る主人公のFBI交渉人が「敵意が無く丸腰であることを証明する」ために真面目にパンツ一丁になるなど、全編にわたってナンセンスなギャグのオンパレードというスリリングな展開。この映画の存在そのものが“クライムサスペンス”のような作品だ。

 スパイシーマック監督は「映画を観てくれる人に笑ってもらいたい。映画を作る目的にそれ以上も、それ以下も無い」と揺るぎない信念を語る。渡米した理由は「やはり世界中の人を楽しませたいから。英語言語で製作すれば、世界中の人が見ますし、それだけでも可能性が広がるから」。渡米後も、フィルムスクールにはいっさい行かず、何年もかけて独自の映画製作メソッドを確立。「予算が無い」「役者が来ない」「製作スタッフがいない」などのいかなる悪条件も乗り越え、監督・撮影・編集を一手に手がけて映画を完成させるスキルと執念を身につけたという。

 今作に至っては、DVD700枚に焼いてジョージ・ルーカスやジェリー・ブラッカイマーなどあらゆるハリウッドセレブに送るといった傍若無人なプロモーションに打って出て、戻ってきたのは約400枚という“成果”もあった。2009年には『メキシコ国際映画祭』(メキシコとアメリカの国境近くにあるリゾート地ロザリオ・ビーチで2007年からスタートしたインディペンデント映画祭)で、長編映画としては日本人初のパルムドール賞を獲得するという快挙も成し遂げた。2010年には北米市場でDVD(米題は『SPICY MAC PROJECT』)の発売にもこぎつけた。

 念願の日本初上陸を果たしてスパイシーマック監督は「これまで日本上陸を阻んでいたのは、自分の監督としての力量の無さ、それに尽きると素直に反省しています。ただ、配給会社からは『お姉ちゃんの裸のシーンはないのか?』『血しぶきやグロいスプラッター的なシーンは無いのか?』などと聞かれ、僕は『赤ちゃんからお年寄りまで安心してご視聴になれる作品』をモットーに作っていたので、その点でボツになったことは結構たくさんありました」と語っている。

 今後もハリウッドを制作活動の拠点とするが、「もちろん日本でもやってみたい。ただ現状では『スパイシーマック? なにそれ? ハンバーガー?』的な知名度ですので、もうちょっと有名になって、ぜひ日本で日本語のコメディ映画を製作したい」と話していた。