川端康成の「眠れる美女」を官能的に描いた『スリーピング ビューティー』、初監督作品への思いを明かす
シネマトゥデイ より(以下一部抜粋)
> 文豪川端康成の名作「眠れる美女」をベースにしたオーストラリア作品『スリーピング ビューティー/禁断の悦び』について、オーストラリアの作家で、映画監督に初挑戦したジュリア・リー監督が語った。
ジュリア・リー監督映画『スリーピング ビューティー/禁断の悦び』場面写真
同作は、自由気ままに生きる女子大生ルーシー(エミリー・ブラウニング)は、学費を稼ぐために幾つかのアルバイトを掛け持ちしていた。ある日、彼女は広告で高額なバイトを見つけ、その新しい仕事の支配人クララ(レイチェル・ブレイク)の事務所を訪れ、面接を受けて合格する。最初は、その秘密クラブで下着姿のまま男性をもてなしていたルーシーだが、徐々にその要求がエスカレートしていくという官能的なドラマ作品。カンヌ国際映画祭のコンペ部門にも出展されていた。
川端康成の原作をベースにしていることについて「確かに川端康成の原作を読んだし、(この川端康成の原作に影響を受けた)コロンビアの作家ガブリエル・ガルシア=マルケスの『わが悲しき娼婦たちの思い出』も読んだわ。ただ、実際には原作の老人がお金を払って若い女性と一夜を過ごすというコンセプトだけを取り入れ、そのほかに聖書やディスニー作品の『眠れる森の美女』のようなおとぎ話的な要素も含めているの。それと、あるときわたしは、夜寝ている間に映画を撮影されてしまうという悪夢を見たことがあって、そこから、自分が寝ている間に何かが起きてしまったらというコンセプトに興味を持ったの。もし、何かその寝ている間に悪いことが起きているかもしれないと予想ができても、それをその女性がどう対処していくかが面白いとも思ったの」と述べているが、作品自体は川端康成の描いた世界の普遍性が、オーストラリアの現代を舞台にしても、変わらないように思えた。
この映画で興味深いのは、女子大生ルーシーと性的関係を持たないボーイフレンド、バードマンとの関係だ。「わたしも、このルーシーとバードマンの関係がこの映画の中では気に入っているの。彼らは親友で、20代の友人関係はよく(感情的に)激しくなってしまうことがあるでしょ、それは特に実家を離れ、自分を教育しながら、地に足を付けようとするから。ただルーシーとバードマンは、そんな均整の取れた人になることをあえて避けているの。実際に、わたしたち自身も均整の取れた人になる必要がないと思っているわ」と語った通り、この二人の関係と秘密クラブの世界が、映画内で対比していて面白い。
映画『ピアノ・レッスン』や『ある貴婦人の肖像』のジェーン・カンピオンが制作に携わったことについて「ジェーンがかかわったのは、わたしが脚本を書き上げたときで、ある人物から彼女を紹介され、わたし自身も彼女のような人物に質問ができる環境にしたほうが、より賢いと思ったからなの。彼女は、ほとんどの撮影準備期間にかかわってくれて、編集時にもアドバイスをくれたわ」と明かした。
川端康成の原作では、女性を見つめる観点から描かれているが、本作では逆に見られている女性側の観点から語られていて興味深く、さらにエミリー・ブラウニングが体当たりで挑戦した官能的な世界も見所になっている。
『スリーピング ビューティー/禁断の悦び』は11月5日よりシネマート新宿ほかにて公開中