Movie Walker より(以下一部抜粋)


>東日本大震災に起因する福島第一原発の事故以降、放射能の脅威に対する不安は未だ拭えずにいる。この事故を語るうえで必ず比較対象とされるのが、1986年4月、当時のソビエト連邦(現ウクライナ)、チェルノブイリ原子力発電所で起きた爆発事故だろう。

【写真】ベラルーシで暮らす一家の姿を通し、放射能の恐ろしさが描かれる

現在も近隣住民に深刻な被害を与えつつ、現存するチェルノブイリ原子力発電所。そこに住む人々の姿をとらえたドラマが、11月19日から公開されている『カリーナの林檎 チェルノブイリの森』だ。

取材途中に亡くなったカリーナ(仮名)に捧げられた本作は、ドキュメンタリーではなく、しっかりと作られたフィクション。登場人物はあくまで架空のものだが、綿密な取材によって、今もなお続くチェルノブイリ原子力発電所事故の後遺症に苦しむ人々の姿がリアリティたっぷりに描かれている。

本作が興味深いのは、日本人監督がメガホンを握っていることだ。それも監督は、富田靖子の初主演作『アイコ十六歳』(83)や、浜崎あゆみも出演している『すももももも』(95)など、数々のアイドル映画で知られる今関あきよしなのだ。

2003年にチェルノブイリ原子力発電所まで自ら足を運び、その目で見たものを脚本に反映させ、再び同地を訪れ、ベラルーシやロシア人スタッフと共に撮影を敢行し、2004年に完成させた。7年の時を経ての公開となるが、劇場公開が決まるや、最新の映像も織り交ぜ、また新たな作品として作り上げる力の入れようだ。

かつてアイドル映画でその手腕を発揮した今関監督の新たな挑戦。福島原発の事故があったからこそ、注目したい一作だ。