Movie Walker より(以下一部抜粋)
>アルフレッド・ヒッチコック監督作『めまい』(58)の主演女優キム・ノヴァクが、ヴァニティ・フェア誌の一ページに渡って、アカデミー賞作品賞有力候補作『アーティスト』を批判。あまりにも過激な発言が物議を醸している。
【写真】『市民ケーン』など、多数の名作にオマージュを捧げたサイレント白黒映画の『アーティスト』
ミシェル・アザナヴィシウス監督自らが「『市民ケーン』など、過去の多数の名作にオマージュを捧げている」と発言しているサイレント白黒映画『アーティスト』には、過去の映画音楽やシーンなどを彷彿とさせるアイテムがたくさん散りばめられているが、『めまい』のためにバーナード・ハーマンが作曲した愛のテーマを『アーティスト』に使われたことに憤慨したキムが、インタビューの中で「これはレイプにほかなりません。私の身体、少なくとも女優としての身体が、『アーティスト』という映画によって暴行された気持ちです」と発言した。
また「注目を集めるために、有名な作品の一部を乱用し、その作品が意図する以上に、新しい作品でより多くの喝采を浴びようとすることは、この業界に身を置く芸術家としてモラルに反することです。観客の感情を盛り上げるために『めまい』の愛のテーマを、『アーティスト』のクライマックスに使用したことは間違いありません。“死人に口なし”でヒッチコック監督や(主演男優の)ジェームズ・スチュアートは何も言えませんが、私が代わりに言います」と、アザナヴィシウス監督を強い口調で非難している、とDisitalspy.COMなどが報じている。
これに対して、レイプ被害者保護団体が「この事態をレイプにたとえるのは極端すぎるし、適切ではない」と声明を出したほか、レイプ被害者の女性はFoxNews.comに対し、「本当にレイプされたのではないのに、レイプという言葉が軽々しく使用されると、実際に苦しんでいる何千万人の被害者の苦しみが軽んじられることになる」と反論しており、ある種の社会問題にまで発展する事態に。
また、アザナヴィシウス監督は「私は、尊敬するヒッチコック、ジョン・フォード、フィッツ・ラング、アーサー・ミラーなどから多大な影響を受けており、またバーナード・ハーマンのことも偉大な作曲家として大変尊敬しています。そして皆さんもご存知のように、彼の音楽は他のいろんな作品に使われており、私も『アーティスト』で使用することができたことを大変光栄に思っています。きちんとした手続きをして使用料を支払っており、何の問題もないと思っていますが、偉大な女優に賛同していただけないのは、極めて遺憾です」と冷静に反論声明を出している。
アザナヴィシウス監督が言う通り、過去の映画音楽は新しい様々な作品で使用されており、権利さえ取得すれば使用すること自体は違法ではない。『アーティスト』が注目を集めすぎたのか、使用する場所が悪かったのか、相手が悪かったのか。いずれにしても同作は、アカデミー賞に不利と言われるミュージカル・コメディ部門の作品ながら、同賞の最有力候補作になっている作品とあって、キムの発言が高齢者の多いアカデミー協会の会員にどこまで波及し、影響を及ぼすのかが懸念される。