アン・ハサウェイ インタビュー ヒュー・ジャックマンは「とてもディープな人」?(cinemacafe.net) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121220-00000012-cine-movi
女優アン・ハサウェイにとって2012年は公私共に輝いた1年、素晴らしい1年だった。映画では、一途な愛を体現してみせた『ワン・デイ 23年のラブストーリー』、魅惑のキャットウーマンに扮した『ダークナイト ライジング』、そしてミュージカルの金字塔『レ・ミゼラブル』が公開となり、プライベートでは9月に俳優のアダム・シュルマンとめでたく結婚。「仕事もプライベートもいままでの人生の中で一番お気に入りの1年になったわ。世界の頂上に立っている気分よ!」と、とびきりの笑顔を見せる。そんな幸せに満ちたアンが、新作『レ・ミゼラブル』をふり返る。
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原作となった「レ・ミゼラブル」は、1985年の初演以来、いまもなおロンドンでロングランを記録し続けているミュージカルの金字塔。パンを盗んだ罪で19年間投獄された男ジャン・バルジャンが、心優しい司教と出会ったことで改心し、運命に導かれるように薄幸な女性・ファンテーヌから彼女の娘・コゼットを託され、彼女に惜しみない愛を注ぐ…という、愛と勇気と希望の物語だ。世界43か国、6,000万人超を動員していることからも名作であること、愛され続けている作品であることは十分に伝わってくるが、それほど多くの人が舞台を観ているからこそ「映画だからできることを目指したの」と語る。その一つは、アンが演じるファンテーヌが髪を切るシーン。彼女がロングヘアから突然ショートヘアになりゴシップを賑わせた理由は、そう、この撮影の中で実際に長い髪をばっさりと切ったからだった。
「何千万人もの人が『レ・ミゼラブル』を観たことがあって、ファンテーヌが髪を切られることを知っているわけでしょう。その彼女の肉体的な犠牲をリアルに見せたい、しかもステージではできない、映画だからこそできる方法で表現したいと思ったの。実際に髪を切ることはチャンスだと思ったわ。だから自分から提案したのよ。トム(・フーパー監督)は、口では「大丈夫?」と言っていたけれど、実際のところ驚いてはいなかったと思う。というのは、(私が)自分の役に本気で打ち込む役者だということを、彼は最初から分かっていてくれたから」。
加えて、大幅な減量とライヴで歌うという挑戦があったが、そのどれも「役者として当たり前のこと」とサラリと答える。彼女をそんな風に昂ぶらせたのは、作品の素晴らしさはもちろん、トム・フーパー監督だったからというのもあるはず。『英国王のスピーチ』でアカデミー賞監督賞を手にした監督の手腕は一体どんなものだったのだろう。「自分の作品に対して彼はとてもクレイジーに打ち込むのよ(笑)」と、演出方法について紐解いていく。
「トムの素晴らしいところは、共感してくれること、思いやりが深いこと、それが嬉しかったわ。特に痛みの大きい場所(演技)に辿り着かなければならないとき、一緒にそこへ来てくれるの。私が一人で座っていたら、その隣に座って涙してくれる、私の役に共感してくれる、キャラクターの痛みを理解してくれていると思うと自信を感じることができるし、より監督を信頼できるものなの。トムは、見た目は落ち着いているけれど、とても情熱的なのよ。正直、彼以外だったらこの『レ・ミゼラブル』は作ることができなかった、こういう作品にはならなかったって思うわ」。
そして、撮影の現場にいた俳優たちですら「完成した映画を観て、一体あの映画をどうやって作ったの? どうやって完成させたの? って思ってしまったわ! もう、魔法ね!」と唸らせてしまうのが、オスカー監督の手腕。実際、これだけ有名で誰もが知っている物語でありながらも深く感動させることができるのは、ある意味“魔法”だ。また、2時間半という長さを感じさせないのは、監督の魔法だけでなく、俳優たちがふりかけた魔法でもある。特にアンの登場シーンは、決して多いとは言えないが、彼女が最初に投げかける愛を観客はラストまで抱き続けることだろう。アンもファンテーヌによって刻まれる愛について、心を大きく動かされたと言う。
「そうね、私も完成した映画を観たとき、彼女の存在をずっと感じ続けることができた。それはとても嬉しいことだったわ。愛は何をも越えるということ、人に対して優しい気持ちを持つこと、どんなに恐ろしい状況であっても(愛し合う)お互いさえいえればやっていけるということ、それをどう見せるのか、どう演じるのか、自分にとってもエキサイティングだった」と言葉に力が入る。そして、ファンテーヌ以上に、主人公ジャン・バルジャンは物語全体を引っぱって行く大きな責任があり、それを演じきったヒュー・ジャックマンに「毎日驚かされ続けたわ!」と、その凄さを称える。
「彼を一言で例えるなら…そうね、とてもディープな人。ディープという言葉は、ときに英語で誠実ではない意味に響くことのある言葉でもあるけれど、彼は本当に良い意味でディープな人なの。知的で、才能があって、魂があって、ユーモアがあって、チャーミングで…。いままで共演してきたどの人よりもエゴのない人、一緒に共演する相手のことを盛り上げてくれる素晴らしい俳優よ。でも、ちょっとイケナイところもあるのよ。実はとってもいたずら好きなの(笑)」と、優しく微笑む。映画スターであると同時にトニー賞に輝くミュージカル・スターとしても活躍するヒューとの共演は、アンにとって実りあるものだったに違いない。また、ファンテーヌが娘・コゼットを想う母の愛、ジャン・バルジャンが血の繋がりを超えてコゼットに注ぐ無償の愛、コゼットと恋人・マリウスの純粋な愛、さまざまな愛が詰まっている作品であることも役者魂をそそったに違いない。けれども、「グラマラスな役よりも醜い役の方が興奮するの」と作品選びについて話す瞬間、その瞳は一瞬にして凛々しくなる。
「やっていて面白い役、演じ甲斐のある役ほどグラマラスなものとは掛け離れていることが多い気がするの。個人的にもスクリーンで自分が醜く見える方がグラマラスでいるよりも興奮するわ。まあ、ドラァグクイーンにとっては別でしょうけどね(笑)。今後やってみたい役? そうね、男性の役も演じてみたいし、より訛りのある役も演じてみたい。そのときに一番難しいと思えるものにチャレンジしてみたいの!」。
2001年に『プリティ・プリンセス』で映画デビューを飾った若き乙女は、2006年の『プラダを着た悪魔』で一躍スターダムに上りつめ、2008年の『レイチェルの結婚』で賞レースを競うステージへと舞い降りた。作品を重ねる毎に才能を一つ、また一つ開花させていく彼女の今後はきっと明るいだろう。アン・ハサウェイの今現在の最高の演技は『レ・ミゼラブル』の中にある──。
(text:Rie Shintani)