ダークヒーロー再び!『ゴーストライダー2』のブライアン・テイラー監督(読売新聞(yorimo)) - Y!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130206-00000301-yorimo-movi
米マーベル・コミックで人気のダークヒーローをニコラス・ケイジが演じたアクション大作『ゴーストライダー2』が2月8日(金)に公開される。2007年公開の『ゴーストライダー』の続編。悪魔との契約によって「ゴーストライダーの呪い」を体に宿してしまった主人公ジョニー・ブレイズが、悪の化身に狙われた少年を救うため、壮絶な闘いを繰り広げる。監督は、スタイリッシュでエッジの効いた映像で知られるマーク・ネヴェルダイン、ブライアン・テイラーのコンビだ。このほど来日したブライアン・テイラー監督が、撮影の舞台裏などについて語った。
――『ゴーストライダー』のパート1を踏襲したところ、反対にパート1から大きく変えたところはそれぞれどういった点ですか?
テイラー監督:『ゴーストライダー2』は、パート1とは全く別の作品だと考えてもらって結構です。パート1は、世界中の多くのファンに愛され、商業的にも成功を収めました。その一方で、マーベル・コミックの「ゴーストライダー」ファンの中には「本来のゴーストライダーは、もっとダークでダーティな面を持っているのに……」と感じた人も少なくなかったようです。そこで僕たちは、パート2の監督を務めるに当たって、ゴーストライダーをパート1とは違うキャラクターにしようと決めたんです。例えば、ゴーストライダーはドクロの頭を持っていますが、パート1ではドクロが白かったのに対し、今回は黒く焼け焦げたドクロにしました。なにせ、ゴーストライダーは「地獄からの使者」なのだから、「黒」の方がふさわしいと考えたのです。コスチュームも、パート1ではスパイクの付いた革ジャンなどを着ていて、80年代のヘビメタ風だったけれど、もっとシンプルな黒ジャケットに変えてみました。ヘビメタ風のコスチュームも個人的には嫌いじゃありませんが、「地獄の使者」が一昔前のファッションを身にまとっているのは、なんだか変だなと思ったんです。さらに、タールで身を焦がし、燃えさかる炎に包まれる姿を描写することで、ゴーストライダーの怖さ、すごみをアップグレードしたつもりです。また、パート1のロケ地はアメリカ南西部でしたが、今回はルーマニアとトルコで撮影を行いました。アメリカ人の目にエキゾチックに映るロケ地を選んだことで、パート1とはまったく異なるコントラストの作品が出来たと思っています。
――本作のゴーストライダーはよりパワフルに、よりハイテンションになったようです。一方、人間の姿に戻ったジョニー・ブレイズは、自分の身に「悪魔」を宿していることに対し、苦悩の色を強めていきます。「悪魔の狂気」と「人間の苦悩」を演じ分けるニコラス・ケイジが印象的でした。
テイラー監督:悪魔を内に抱えているという状態は、一種の中毒症状のようなものかも知れません。パート1の時は、症状はまだ初期段階だったけれど、次第に毒がジョニー・ブレイズをむしばんでいくわけです。そして彼は、このまま悪魔によって身を滅ぼされていくのか、それとも、悪魔とうまく共存していくのかという岐路に立たされる。撮影前、そんなアイデアをニコラス・ケイジに話したら、彼がすごく共感してくれたんです。(ニコラス・ケイジがアルコール依存症の男を演じた)『リービング・ラスベガス』(95年)とはだいぶ作風が違うけれど、彼は今までの演技経験を全部この作品に取り入れて、すごみのある「壊れたヒーロー」を表現してくれました。
――ゴーストライダーのアクションシーンなどでもスタントマンを使わず、ニコラス・ケイジ本人が演じたそうですね。彼は「こんなに命知らずの撮影は初めて」と語っているようですが。
テイラー監督:確かに、僕たちが俳優をかなり追い込んで、本来ならスタントマンがやるようなアクションにも挑戦してもらったという面はありますね。ニコラス・ケイジのような大スターに、あんな危険なスタントを要求したクレイジーな映画監督は、今まで誰もいなかったでしょう(笑)。もちろん、危険なシーンを撮影するに当たっては、安全性もちゃんと考慮していますよ。僕は、俳優がただ演技をするだけでなく、そうした危険なシーンにも関与することで、作品に素晴らしい効果をもたらしてくれると信じているんです。
――撮影で大変だったことはありますか?
テイラー監督:ロケ地が外国だったので、大変なことがいろいろありましたね。今回は、大きな映画会社がスター俳優を使って製作する作品にもかかわらず、まるでインディペンデント映画(自主製作映画)のようなゲリラ的な撮影が多かったんです。僕たちはこれまで低予算映画をたくさん作ってきたけれど、今までのどの映画よりもハードな撮影でした。特に大変だったのが、クライマックスのカーチェイスのシーンです。ロケの最終盤での撮影だったので、スタッフはもうヘトヘト、6台用意した車はどれもまともに動かない、スタントマンはけがをしている。おまけに、撮影に残された日数が4日間しかなかったんです。普通の映画プロダクションなら、20日間ぐらいかけて撮影する大がかりなシーンにもかかわらず、です。それでもどうにか無事に撮り終えることができました。今振り返ると、「よくあんな状況で撮影できたな」と思います。
――マーク・ネヴェルダイン監督とはこれまで『アドレナリン』(07年)、『GAMER』(10年)をはじめ、数々の作品を共同で製作しています。彼との共同製作によってもたらされるものは何ですか?
テイラー監督:僕たちはアマチュア時代からずっと一緒にやってきたので、映画作りのテクニック、スタイルが確立しています。僕たちの映画作りは、例えるなら「速記」のようなもの。二人がかりなので、撮影のスピードがとても速いんです。普通の映画だったら、12カットとか24カットぐらいしか撮れない場合でも、僕らは48カットあるいは60カットも撮ることができる。特にアクション映画の場合は、スピーディにたくさんのカットが撮れるのはとても有利なことだから、マークとはこれからも一緒に作品を作り続けていくでしょうね。
――撮影現場で、二人の意見が食い違うことはないのですか?
テイラー監督:お互いに「こうやって撮った方がいい」と意見が食い違った時は、それぞれ考えた通りに撮ってみるんです。僕たちは仕事のスピードが速いので、「時間がないから、どちらか一方に決めてから撮ろう」などと考える必要がないんです。僕とマークがそれぞれ撮った映像を編集作業の段階で見比べてみれば、どちらの映像を使うべきなのかは一目瞭然なので、そこで意見が食い違うことはありません。
――近年、アメリカン・コミックを題材にした実写映画が次々と製作されています。
テイラー監督:いじめられっ子や弱虫がスーパーヒーローに変身して強くなる。そんなストーリーに、誰もが憧れ、胸を躍らせるからでしょう。それと、CGの技術が格段に進歩したことも、ヒーローものの映画がたくさん作られるようになった大きな要因の一つだと思います。90年代までの映画だと、ヒーローがしわの寄ったタイツ姿で走り回ったりして、ダサさがぬぐえなかった(笑)。今ではCGによって、コミックを読んだ時に感じた「かっこよさ」を損なわずに、ヒーローの姿を描写できるようになった。それが大きいと思います。