「クラウド アトラス」公式サイト
これは何が何でも最後まで見るべき映画。
中途はどうあれ、ラストには幸せで満ち足りた気分を味わえます。それにたぶん、一番おもしろいがエンドクレジットだから。これはスゴイですよ~、謎解きの興奮としてやられたという意外な驚きをほぼ同時に味わえますから。
物語は複雑に絡みあっているように見えますが、基本は3組のカップルの恋物語。彼らが転生輪廻を繰り返し、様々な時代、人種、性に生まれ変わりながら真の恋人に出会うまでが、ある時点での回想として語られます。
この回想が手が混んでて、一連の記憶であったり、語り部による「お話」であったり、何通もの手紙であったり、尋問官の聴取であったり、日記であったりそれが出版された本であったり、また出版を予定しつつ書いている最中の回想録であったりするわけです。
回想している人物はそれぞれの時間軸に沿って行動しているのですが、彼らの回想シーンは必ずしも時系列に沿って並んでいるわけではない……というのが「クラウド アトラス」の難しい部分でしょうかね。回想している人物の今=現在と回想シーン=過去が交互に出てくるので。
その回想をしている人物が主人公となって語られる物語が6篇、だから6人分の過去と現在の話をところどころで切って断片とし、彼らの話の流れの順番はそのままに6人分の断片をまぜこぜにして一つながりにして見せているのが「クラウド アトラス」です。まあ、あれです、6本の紙芝居をそれぞれの並びの順序はそのままに適当に入れ替えながら読んだらこうなるって感じですね。
一応「クラウド アトラス」の場合は、一人の断片と別の一人の断片が入れ替わるにはキッカケが必要なことになってます。キッカケになるのはその二つの断片に共通の何か。ところがこの「何か」がまちまちで、特に決まってないのが難なのよね。それはある登場人物の服のボタンであったり、単に閃光であったり……とにかく、ある物語の断片の終わりに出てきた「何か」で次の断片が始まるという仕掛けです。
また転生輪廻した登場人物達が過去世のことを思い出す呼び水となるのが音楽だったりもするのですが、どうやらそれが一つの物語の中で作曲された「クラウド アトラス」らしいのですよ。らしい、というのはストーリーを追うのに精一杯で、一度映画を見ただけでは劇中流れるメロディーを覚える事ができなかったからです。
まあね、この途中のバラバラな部分で例え話のスジを追えなくなったとしても、別にそれは構わないのですよ。それぞれの話の最後と、映画そのもののラストシーンさえ見れば、全てはその結末に至るまでの長い試練の旅路だったのね、で納得できますから。その時点でそれまでの映像を元にそれぞれの物語が大まかに再構成されて「あれはそういうことだったのね」と何となく理解できますから、私はそれでいいんだと思いました。
この「クラウド アトラス」、欧米の人達より私達日本人の方がとっつきやすいんじゃないかな。
というのも転生輪廻という概念自体が結構なじみ深いものなので、一人の俳優さんがいろんな顔で出てきたとしても「あ、今度はここに生まれ変わったのね」とすんなり納得できるから。顔がメイクでわからなくなってても、声を聞けば誰だか特定できる場合もあるし。
それに「音楽が呼び水となって過去世を思い出す」とか、「生まれ変わっても同じ人を愛し続ける」とか、そういうコンセプトの作品、すでにありますもの、この国には。
私が見終わってすぐ思い出したのは日渡早紀のマンガ、「ぼくの地球を守って」でしたね~♪ 話自体は全然違うんですが、映画のラストで感じるものが似通っていて♪ 「未来のうてな」も近いかな?
何度生まれ変わっても探す相手はたった一人。
巡り会えれば心満たされ、出会えなければ空虚な人生。
「クラウド アトラス」、映画の構成は込み入ってますが、作品の言いたいことはたったこれだけです。
たったそれだけですが、だからこそ人の心に届けるために、持って回った事をしなければならないのですね。
ご苦労様です。