「ラストスタンド」、実は有名俳優てんこ盛り！

「ラストスタンド」の俳優陣の豪華さについては下の記事でも書きましたが、それもシュワルツェネッガー主演だからこその大盤振る舞いなのだと思います。普通この手の映画で主役の他にフォレスト・ウィテカーとピーター・ストーメアは一緒に出さんだろうとか、ロドリゴ・サントロとエドゥアルド・ノリエガってどっちもラテンでなんかちょっとカブらない？！　みたいな。

彼らはそれぞれは主演級の俳優なのに、「ラストスタンド」ではシュワを差し置くわけにはいかんときっちりただの脇役に徹しているのですよ。フォレスト・ウィテカーは例えば「ダイ・ハード」シリーズなんかに出てくるやたら威張ってどなり散らすＦＢＩのエライさんの役。普通そういう役にフォレスト・ウィテカー使わないですよ？　ってゆーか、彼がそういう役演じてたら裏に何かがあるなとか、実は全ての黒幕じゃないかとか、そのぐらい勘ぐっちゃいますよ、映画ファンならね！

まあ、フォレスト・ウィテカーともなると、彼の存在自体が映画のミステリーにおけるミスディレクションの一つになりうるということで、勝手にあれこれ気を回す私の方がバカなんでしょうが、それにしてもこの役じゃあ彼の演技力が泣くっていうの。

もっとも、彼自身がこういう……ちょっとばかりサミュエル・Ｌ・ジャクソンちっくな役柄を楽しんでた、と考えられないわけでもありません。シュワと並んでヒケをとらないアフリカ系俳優さんったら、彼らの他にはあとウィル・スミスぐらい？　でもウィルは主役しか演じないから「ラストスタンド」には出られないのね。Ｌジャクは「アベンジャーズ」で地球救うのに忙しいし、だとしたらここはフォレストしかいなかった……っていうキャスティングなのかもしれないです。ジェイミー・フォックスは、体の大きさで負けるからね。あ、つまり演技力は問題じゃないのか、なるほど（←おいおい）。

フォレストに体の幅はともかく役の幅では負けてないのがピーター・ストーメア。この方ちょっと前には「ロックアウト」にも出てましたわ。「ファーゴ」では寡黙な犯罪者、「アルマゲドン」では饒舌な宇宙飛行士と役の幅が広いもんで、映画に出るとどっちに転ぶか最後まで分からなかったりするのが彼の魅力なんですが、今回は大変分かりやすく「見るからに悪党」役に徹しておりました。一応、彼の持ち味である二面性を見せる場面もありましたが、観客が彼がどっちの側に与するのか悩む機会は一瞬たりともなかったような……だって見るからに怪しく振る舞ってるんだもんね。

ま、ピーターのちょっとばかりキレた悪人ぶりというのは見ていて大変楽しいです。怒鳴り散らすフォレストよりもずっとマシ。この「ラストスタンド」という作品に現実味とウソ臭くなさという意味での信憑性を与えているのはひとえにピーターの演技力の賜と言えましょう。現実にはあり得ないようなキャラなのに、一番存在感あるんですもの。こんな変な人が実際に存在する世界ならば他の現実味に欠けるキャラだって存在したっておかしくないわと観客は思うわけです、ピーターの演技を見て。「ラストスタンド」の陰の功労者と言えるかもしれません。

フォレストとピーターの二人が演技面で作品を支えているなら、ロドリゴとエドゥアルドの二人はその美貌で作品に華を添える……役であってしかるべきと思うんですけどねえ、シュワに敬意を払ってか遠慮してかその美形ぶりを充分には発揮していなかったようです。特にロドリゴ・サントロ。登場シーンで彼だと気づかなかったもん、私。何故か檻に入ってたせいで髪も髭も小汚いイメージだったせいかもしれませんが、やっぱりシュワより目立っちゃいけないってんでその美しい顔を大っぴらには出してないんですよね。もったいないわ～。彼は一応後半に見せ場があるので、その際には少々キレイになって男前度を2割ぐらいアップさせてるんですけど、それでも本来のロドリゴの半分くらいだわ～。もったいないわ～。そういえば当初彼が檻の中だったせいで「要塞警察」的な展開になるのかと思ったんですが、全然違ったのでした。

まあロドリゴ・サントロ、「３００」のクセルクセスですからね。顔だけじゃなく鍛え上げた筋肉までもが美しい人ですからね。それを観客が知ってれば、「ラストスタンド」における彼の役が見た目ヤワで頼りなくても実は滅法強くてリーダーシップもあることを抵抗なく受け入れられるという利点があるのかもしれませんよね。映画にジャン・レノ出てきたら「暗殺の手練れ！」、シガニー・ウィーバー出てきたら「人類最強の女！」と脈絡なく感じちゃうようにね（この二人は「ラストスタンド」には出てません）。

上記三人に比べると役にピッタリだったのがエドゥアルド・ノリエガでしょうか。濃くてしぶとくてハンサムで悪い奴。うん、似合ってる似合ってる♪　最後まで楽しませてくれましたわよ♪　ワタクシ、オリヴィエ・マルティネスとエドゥアルドだったら、エドゥアルドの方が好みでございます。特に髭面比較でエドに軍配。何のこっちゃ。彼の顔をご存じないという方は、ハビエル･バルデムをうんと美形にした感じを思い浮かべて下さいませ（無理？）。

さて、「ラストスタンド」のエドゥアルドは「オズ　始まりの戦い」のレイチェル・ワイズ並に縛られることなく己が道を突っ走る幸福を享受しております。役の上での束縛のなさは演じる俳優に自由闊達さを与え、それが彼ら彼女らを普段より一層美しく輝かせるのですが、このエドがまさにそんな感じ。「ラストスタンド」中、最も生き生きしているのが彼なのでございますよ。この物語の推進力って、たぶん彼が担っているんですよね。彼と、彼の駆る車。

そう、実は「ラストスタンド」のおもしろさは「ワイルド・スピード」シリーズばりのカーアクションにもあったのでした。